法人の経費計上は慎重に 不動産投資は気軽に節税できません

巷にあふれる書籍では、法人のメリットとして節税メリットが挙げられる
ことが非常に多いです。

それ自体は間違いではありませんが、不動産投資で節税メリットを享受
することには、非常に重要な前提条件があります。

それを無視して節税にいそしむと、本来望んだ物と全く異なる結果を
得ることにもなりません。

法人のメリットは節税?

法人設立のメリットは節税とよく言われます。

それは、たしかにその通りなのです。
法人の方が、個人よりも税金面で様々なメリットを持っていることは
間違いありません。

ただ、法人を設立した目的をきちんと認識しておいて頂きたいのです。

法人を設立して物件を購入すると、税金を払いたくないと考える方が
結構いらっしゃいます。

その気持は大変良くわかります。
私自身、納税は非常に辛いものがあります。

しかし、その感情のままに行動してしまうと、法人を設立した本来の
目的を達成できない恐れも出てきます。

法人の大原則は、利益をあげること

しかしながら、くれぐれも勘違いしていただきたくないのは、法人は、利益を計上
しないと評価されないということです。

いや、同族会社で一人社長、実質個人と変わらないのだから、税金は減らすだけ
減らしたらいいんじゃないの?別に評価されなくてもいいじゃん。

と言われるかもしれません。

それは、「今後銀行から融資を受けない」場合にのみ正しいのです。

銀行から融資を受ける場合、法人としての実績、つまり利益や純資産の状況は
極めて重要です。

毎年赤字の決算書を銀行に見せて、

「いやー個人の経費を法人につけまくったら利益ほとんどなくなりましたけど、
全体で見たら税金分現金は残っているので問題ないっす」

なんて言っても、銀行は相手にしてくれないでしょう。
彼らは、あくまで法人単体での実績を見ているのですから。
利益の出ない会社に融資はしてくれません。

もちろん、例外はあります。

物件の取得がかさみ、取得初期コストで赤字になった、減価償却が大きく
赤字になったであれば、説明次第では問題ないでしょう。
また、個人で大きな給与や資産があったりしても、大丈夫かもしれません。

しかし、そうでないならば、経常経費のせいで利益をしっかり確保できない会社は、
それなりの評価しか得られないのです。

そして、追加で物件を取得する際に、融資を受けられないようになってしまいます。

節税は、それなりの規模と利益を確保してから

節税を大々的にできる人というのは、それなりに限られてくるものです

・すでに業歴が長く、物件の売買を経て財務状態が極めて良い
・利益を毎年継続して多額に計上できる(通年利益が減価償却後で1千万以上など)
・既に拡大を終了し、あとは資産を入替えてゆくだけ
・給与所得が非常に高く、節税メリットのみを享受するだけでよい
・そもそも地主である

このような場合には、節税に注力しても問題ないでしょう。

そうではない場合、物件を購入してすぐであったりする場合は、
財務状態は極めて脆弱です。

あなたの法人の自己資本比率は何%でしょうか?
フルローンの場合では、おそらく数%も無いかもしれません。

あなたの法人の債務償還年数は何年でしょうか?
経費を全く計上しなくても、25~30年はあるのではないでしょうか?

このような法人に、銀行が融資することは通常ありません。
通常無いことが行われたのは、銀行が個人の属性(給与収入)を担保として
考えているからです。
しかし、給与収入が激増しない限り、この個人属性も早晩枯渇します。

物件を増やしてゆくためには、どうしても法人の魅力・信用で融資が受けられる
ようにならなくてはなりません。

そうであれば、過大な経費の計上は、ただでさえ脆い財務状態を、
壊滅的に悪化させる恐れがあります。

財務状態を改善するためには何をする?

財務状態を改善する方法は、2つあります。

①増資する
②利益を計上する

王道は、何と言っても②利益を計上することです。

そして、この利益は「税引後利益」である点に要注意です。
つまり、税金を払わないで税引後利益を増加させることは不可能なのです。

財務状態を改善し、銀行から「融資を受けてもらえませんか?」と言われるように
なるためには、この厳しい納税の道を通るしかないのです。

そうなった後に、十分に節税してゆけば良いと思います。

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