売買契約書が税務署に否認される?~土地建物の金額の決め方②

土地建物の按分は、売買契約書の記載がある場合はそれに
よって計算することが大前提です。
しかし、実は売買契約書が否認されたケースもあります。

非常に珍しいケースですので見てみましょう。

シリーズ:土地建物割合を考えよう
第1回:不動産の土地建物の金額を考えていますか?
第2回:はじめに売買契約書ありき~土地建物の金額の決め方①
第3回:売買契約書が税務署に否認される?~土地建物の金額の決め方②
第4回:売買契約書に土地建物をまとめて記載した場合~土地建物の金額の決め方③

判決要旨

Aさんは個人Bさんより土地建物を購入し、売買契約書に土地建物を区分して記載しました。
本来であればそれ以上の論点はありませんが、今回は論点になってしまったケースです。

Aさんは売買契約書に下記のように書き込みました。

土地建物:総額1.2億円 土地6,500万円、建物5,900万円

これに対して、判決は以下のようになりました。

H20.8.6那覇地裁

上記購入の代価については、土地と建物が一括して売買され、その売買契約において定められた土地及び建物それぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合に、これを同条項の取得価額としてそのまま認めることは、売買契約の際に、土地と建物への代金額の割り付けを操作することで容易に減価償却資産として損金に算入される額を操作できることとなり、これが租税負担の公平の原則に反する結果となるのは明らかである。したがって、このような場合には、合理的な基準により算定される土地価額と建物価額の割付額をもって、同条項にいう「当該資産の購入の代価」と解するのが相当である。

 

つまり、客観的な価格と比較して著しく不合理であるため、売買契約書の記載金額は
採用できないということですね。

ポイントは、著しく不合理であるという点です。

著しく不合理とは?

那覇地裁は判決の中で以下のポイントを指摘しています。

固定資産税評価額等との比較

この土地は、売買契約書では6,500万円と記載されています。

一方、固定資産税評価額が2億円、路線価で計算すると1.7億円、
公示地価で計算すると2億円となっていたのです。

建物の使用状況

この建物は、売買契約書には5,900万円と記載されているわけですが、
昭和36年や昭和39年に建設された相当に古いものであり、無人で、
電力の供給もされていなかった。

超築古のあばら家だったのでしょうね。

要するに、建物自体の価値はほぼなかったといいたいわけです。

売主の状況

売主であるBさんは裁判所の聴取に対し、

売買契約書に記載した土地建物の金額は意識したことがなかった。
自分としては土地を売った認識であった。

と証言しています。

 

土地の積算の半額以下で物件を購入したのに、土地建物割合がほぼ50%
になっているという状況です。

以上から、土地の価値から見ても、建物の価値からみても、売買契約書の金額は明らかに
不合理であり、かつ、売主のBさんと合意したといってもBさんは主体的意思を持っておらず、
言いなりであっただけ。

よって、売買契約書記載の金額は否認された…というわけです。

明らかにおかしいことをしてはいけない

ここまで読んでいただければ、まぁ否認されても仕方ないかな…
と思われるのではないでしょうか。

固定資産税評価額が2億円の土地を6千万円とするのも、昭和30年代築の
無人で電気も通っていない建物に5千万円の値段をつけるのも、経済合理性では
正直説明できないですよね。

建物割合を高くすることは、投資家としては当然考えることです。

しかし、それが一般常識からあまりに乖離してしますと、否認される
リスクを負ってしまいます。

結局、やりすぎはダメということです。

 

バカヤロウ、自由な経済行為に、税務署風情が何の権限を以て口を差し挟むのだ!
とお怒りの方もいるかもしれません。
その点補足すると、税務署は売買契約書を無効にしているわけではなく、
売買契約書を税金の計算の基礎とすることを否定しているのですね。

課税の公正のため、行われた取引をその形式ではなく実態に着目して課税する
ことは各種判例で認められているので、この点はどうしようもないですね。

税理士、不動産経営アドバイザー
税理士ですが、一都三県にて不動産経営を第2の本業として取り組んでいます。
不動産の最大の経費は税金ですが、税金だけ見ていても上手く行きません。徹底的な数値化と経験に基づき、個人・法人・銀行・追加取得・売却をトータルに判断するお手伝いをしています。

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