不動産投資での納税の重要性 節税のデメリットに注意しましょう

税理士としてお客様と接していて思うのは、納税に対する非常に強い抵抗感です。

これは、私自身よく理解できることです。
自分が汗水たらして稼ぎ出した金を、国に取られてしまうという感覚はよくわかります。

納税をしたくないあまりに、経費を多額に計上し、利益圧縮をやりたがる方は多いです。
それは、それは本当にあなたにとって良いことなのでしょうか?

今回は、納税について考えてみましょう。

辛い納税、強い痛税感

納税は本当につらいことです。何も感じず納税できる人は
おそらくいないでしょう。

特に所得税は実にえぐいですね。最高税率の適用される人は、
所得税45%に加え住民税10%も支払いますから、55%です。

稼ぎの半分以上ですね。

また、法人も近年減税傾向とは言え、800万円をこえる利益に対しては、
40%近い税率が課されます。

自分の稼ぎを掠め取られる、そんなイメージも理解できないことはありません。

しかし、今回はあくまで自分のため、積極的に納税したほうが良いケースもある
ということを見てみたいと思います。

納税と財務状態のリンク

一つ例を取って見てみます。物件を購入し、節税のため第二期から役員報酬を
導入したパターンです。

まず節税しない場合は以下のようになります。

注目していただきたいのは、第1期末から第2期末への純資産の変化です。
ちょうど、第2期の利益分増加していますね。

 

では、続いて節税策として役員報酬を1,000支払った場合を考えていましょう。

役員報酬は、法人の通帳から個人の通帳にお金を移しているだけという
イメージがあり、しかも経費となることから、節税策として非常にポピュラーです。

第2期PLで役員報酬が発生し、法人税が△377から△127に減りました。
節税という点では、税金は減っているので成功しています。

その代わり、当たり前ではありますが、税後利益が1,132から382に減少しました。

また、その結果ですが、第2期のBS上で、純資産が1,469となり、
役員報酬を出さないパターン2,219より減少しています。

 

では、節税しなかった場合と節税した場合で何が異なっているのでしょうか?
次の2つに着目したいところです。

  • 純資産の拡大スピード

 

「納税したほうが、純資産が増加している」という点は、
上の例でご理解いただけるかと思います。

今回の例では、1年間の例示ですので、そこまで大きな差は発生しませんが、
これが10年続いたとしたらどうでしょうか?

その純資産の厚さは比べ物にならない状態になってしまいます。

財務状態は、毎年の利益によってのみ改善できます。
この積み上げは、後で取り返しのつかない差を生み出すことになるでしょう。

つまり、目先の税金に負けて毀損した財務諸表は、その改善に多くの
時間を要するのです。

  • 債務償還年数の短縮

この例では、財務状態を見る上で重要な指標である債務償還年数がどう変わるでしょうか?

 

節税なし:95,879÷(1,688+1,852)=27年

節税あり:95,879÷(382+1,852)=42.9年

 

役員報酬という節税策の導入により、債務償還年数はほぼ倍近くになってしまいました。
債務償還年数42.9年というのは、正直次の借入は難しいと考えられます。

債務償還年数は、借りれ残高を、利益+減価償却費の合計額で割戻して計算します。
つまり、利益額が大きいほど債務償還年数は短くなるのです。

 

つまり、節税をして利益を小さくしてしまうと、債務償還年数も長くなってしまうのです。

節税してもいい人、節税しないほうがいい人

節税とは、主に利益を圧縮することによって達成されます。
節税をすると、利益が減少するため、財務状態を悪化させてしまうのです。

このため、節税に取り組むには、ある程度の条件があると考えています。

おおむね、次のような場合は節税に積極的に取り組んでもよいでしょう。

  1. 節税しても十分な利益が残るため、財務状態は良好に維持できる場合
  2. すでに十分な規模に達したため、これ以上の拡大を行わない場合
  3. 所得税率の高い高額所得者が個人で保有する場合

このような状態になれば、節税に積極的に取り組むべきでしょう。

それ以前の状態で節税に取り組んでしまうと、将来の規模拡大の芽を
摘んでしまう恐れもあることから、慎重になるべきだと考えています。

納税は辛いことですが、将来その見返りは良好な財務状態を通じて必ず訪れます。

投資初期には辛いことですが、なんとか耐えて税金を納めていきましょう。

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