不動産投資での、消費税還付の6つのデメリットを理解する

不動産投資家の皆さんは、消費税還付に対して積極的です。

私自身も消費税還付は受けていますが、資金的なメリットがある
一方で、無視できないデメリットがあることも事実です。

メリットとデメリットを把握した上で行いたいですね。

消費税還付の基本はこのページをご参照ください。

また、→「消費税還付のメリットは無い!?結局得なのか損なのか?」では、
消費税還付を最終的な手残りの観点から考えています。
こちらもご参照ください。

3年間程度は物件を売却しにくい

通常、消費税還付を受けた場合、その後3年間は消費税の納税義務が生じます。

消費税還付

ではどうなるかというと、この第3期までの間は消費税が発生した場合、その
納税が必要になります。

では、この3年以内で物件を購入するとどうなるでしょうか?

第1期の購入時に建物に関する消費税の還付を受けましたが、その建物を売却
すると、結局還付を受けた消費税をそのまま納税することになります。

結果として、消費税還付を受けても意味がなかったということですね。

意味がなかっただけなら良いのですが、税理士報酬として還付額の20%
など支払っていた場合、その部分が完全に持ち出しになってしまいます。

最近は、購入したものの空室に対応できなかったりして急いで売りに出す
ケースも散見されます。
その場合、消費税の納税も必要になってくるので、3年以内に売却する場合は、
トータル収支としてはマイナスになる可能性が高いです。

このため、3年以内に売却することは、よほどのことがない限り避けるべき
ということになります。

3年間程度は物件を追加取得しにくい

先程、物件を購入してから3年間は消費税の納税義務があると書きました。

では、この3年の間に物件を追加取得したりすると、どうなるでしょうか?

消費税還付

このように、物件を追加購入してからさらに3年間、消費税の納税義務が生じる
ことになるのです。

こうなってくると、物件の売却がかなり制限されることになります。

基本的に、長期保有で考えている方にはあまり影響の無い話なのですが、
実際に物件を保有してみると想定外のことというものは起こるものです。

物件を売却したときに、消費税をまるっと納税しなければならないという点は
意識しておきましょう。

このように、本来物件を購入するか売却するかというのは、もっぱら経営判断に
よるところですが、そこに「消費税の納税が必要になるぞ」という別の観点が
入ってきてしまうことになるのです。

最初に還付を受けた分を返すだけでしょ?というのはそのとおりなのですが、
その場合、税理士報酬や還付を受けるために費やした各種コストは無駄になります。

3年後に消費税還付失敗の可能性

消費税の計算には、課税売上割合というものがあります。

計算式は以下のようになります。

課税売上高とは、自動販売機収入や駐車場賃料、商品の売上、自動車の売却などになります。
非課税売上高とは、家賃や更新料、礼金などの部屋の賃貸で生じる収入です。

この課税売上割合が、3年間の累計で50%以上を維持しなければならないのです。

以下の例は、ちょうと課税売上割合が3年間で50%になっているケースです。

消費税還付

ということは、例えば、3年間の課税売上を50%になるまで出せなかった場合、例えば、
45%にしかならなかった場合は、最初の還付額のうち、1-45%=55%分を
返還しなければならないのです。

これは、物件を追加取得して、家賃が増加してしまったような場合も同じことになります。

分母が増えてしまうので、3年間の課税売上割合を維持するためには、もっと課税売上
が必要になってきてしまいます。

その他、課税売上割合に由来するデメリットはまだありますが、これ以上は
非常に細かい内容ですので、割愛します。

「3年間」に意識を縛られてしまうのは大きなデメリット

このように、消費税還付には一般的には「3年縛り」と呼ばれる制限があります。

このため、購入後3年以内の売買はしにくくなります。
本当は自由に売買できるのですが、「消費税のデメリットがある」という意識が
投資家の判断を縛ってしまうのです。

何が問題かというと、消費税に縛られて最善の判断ができなくなることです。

例えば、物件を購入した後に、売却するとかなり高値で売れるとしましょう。
そうなると、本来は保有することと、売却することのどちらにメリットがあるのか
考えることが必要ですが、この判断に消費税という要素が入ってきます。

「消費税があるから3年は売れないんだよね~」とおっしゃる投資家は多いのです。

しかし、本来売却するかどうかの判断に消費税は関係ありません。
消費税を含めても売却メリットがあるなら売却する方が良い判断と言えます。

しかし、「消費税の3年縛り」の意識が強すぎるために、本来選択できるはずの
選択肢を最初から排除してしまうのです。

このように、投資家の意識を、一種無意識下で縛ってしまう効果が消費税還付には
あると感じています。

このような点も多くの投資家と話す限り無視できないデメリットです。

決算書の作り方次第では、次の融資の障害になる

不動産を購入しただけでは還付というのは発生しません。

別途、家賃収入以外の課税売上が生じる必要があります。

この課税売上を決算書上で売上などに表示した場合、賃料収入以外の売上が
かなりの金額で発生してしまう事になりがちです。

本来、不動産賃貸業の会社として設立しているはずですので、賃料以外の
売上というのは、本業ではない売上ということです。

では、そのような本業でない売上が多額に発生している決算書を銀行が
どう見るかというと、正直良い見方はしません。

当然ながら、本業以外の売上が巨額に計上されているのは不正常であって、
融資金がその本業以外に流用されるかもしれませんし、本業の不動産以外の
部分での失敗で倒産してしまう可能性すら感じるでしょう。

このため、追加の銀行融資を断られたという事例は何度か耳にしました。

実は、これは回避する方法があるのですが、多くの税理士が本業でないこの
課税売上を決算書上も売上としてしまうので、困っている方も多いです。

税理士に無視できない報酬を支払う

何度も書いてきましたが、消費税還付には、成功報酬として還付額の2~3割を
支払うことが多いです。

それでも、いくらかは収支がプラスになるなら良いとお考えの方も多いでしょうが、
こうなるとある程度の還付額の規模感がないと、手間なども考えると割に合わない
ケースもよく見ます。

また、税理士も消費税還付をしたほうが儲かると考えているので、消費税還付
をすべきでない人にも無理やりやらせている事例も見ます。

メリットに加えデメリットも慎重に検討した上で決断しましょう。

デメリットを上回るメリットを感じれば、やりましょう。

デメリットとしていくつかありますが、最も大きなことが、本来自由に行える
経営判断を縛られてしまうということです。

例えば、物件購入後2年で売れば儲かったのに、消費税還付を受けたので3年間
経ってから売ったら思った値段で売れなかったということも十分にありえます。

デメリットはこのようにいくつかありますが、ただ、やはり投資初期に還付を
受けられるというのはメリットとして大きいもの。

不動産の拡大フェーズでは資金がどうしても減ってしまうので、消費税還付
によってその資金需要を緩和するできるのです。

また、現在の消費税還付の手法は、恐らく税制改正により封じられるのもそう遠い
将来ではないでしょう。

自身の投資スケジュールなどと照らし合わせて、実行するかどうかを決めていきましょう。

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