法定耐用年数に関する勘違い

不動産賃貸上、減価償却費は非常に重要なテーマです。

しかしながら、減価償却に関しては、法定耐用年数について結構根本的な
ところで誤解が広がっているとも感じます。

今回はその点を考えてみます。

この点は、以下の記事でさらに深掘りしています。

減価償却の法定耐用年数

減価償却の法定耐用年数とは、保有した物件に関する減価償却を、
何年間で行うかという基準です。

建物であれば、構造により下記のように定められています。

SRC、RC造:47年
れんが、石、ブロック造:38年
鉄骨造:34~19年
木造:22年
木造モルタル造:20年

などですね。

例えば、RC造の新築建物を1億円で取得した場合、1億円を47年間で按分して
経費にすることになります。

1億円÷47=2,127,659円

これが1年間の経費になるというわけです。

法定耐用年数を超過しても、減価償却は可能

この法定耐用年数に関する大きな勘違いは、法定耐用年数を超過した物件は
減価償却ができないというものです。

これは、不動産会社のみならず、銀行員から聞くこともあります。

「今回の物件は築25年の木造ですけど、もう減価償却できないですよね?」

というようなことです。

つまり、木造物件の法定耐用年数は22年ですが、その物件が建設されてから22年間
減価償却できると解釈されているのです。
このため、築25年の木造物件はもう減価償却できないのではないかと思ってしまう
のですね。

減価償却はそういうものではありません。
減価償却とは、建物取得に要したコストを、どのタイミングで経費に計上するか
ということです。

減価償却をしないということは、コストを払ったのに、そのコスト
を経費にしないということですので、そのようなことはありえないことです。

減価償却の法定耐用年数を計算する起点は、その物件を取得した日です。

つまり、築25年の木造物件も、購入した日から22年間減価償却できるのです。
(中古資産の耐用年数という考え方もありますが、減価償却できる点は同じです)

法定耐用年数と、建物本来の耐用年数の混同

このような話が生じる根本は、税務上の法定耐用年数と、建物本来の耐用年数を
混同して認識されていることではないかと感じています。
建物本来の耐用年数には、物理的耐用年数・機能的耐用年数・経済的耐用年数などが
あります。

例えば、RC造の法定耐用年数は47年ですが、「RC造の物件は47年しか建物がもたない」
という勘違いです。

実際は、RC造はメンテナンスが適正であれば、100年以上使用できると言われています。
この場合の100年は、実際に使える期間ですので、これは物理的耐用年数です。

また、建物本来の耐用年数は建物によって異なるものです。

しかし、税務上はすべての建物に一律に法定耐用年数が適用されます。

これは、その建物が、その期間しか使えないということを意味しているわけではなく、
あくまで税金計算のために減価償却費を計算する必要があるので、その時に便利なように
便宜的に定められているものに過ぎません。

実際、法定耐用年数は時代によって異なっています。
例えば、平成10年の税制改正により、RC造の法定耐用年数は60年から47年に
13年間も短縮されています。

更に言うと、一番最初にRC造の法定耐用年数が定められた時、
その期間は100年間でした。(大正7年の主秘第177号通牒)

これは日本の建築業の劣化によってRCの質が下がったというわけではありません。
自社保有建物を早期に償却したい経団連の働きかけ、国際競争上の配慮など、様々な
利害関係が法定耐用年数を短縮させたに過ぎません。

RC造物件が生み出す価値は、大正7年と今も、平成10年の前後でも変化していません。
しかし、法定耐用年数は短縮されたのです。

これは、法定耐用年数が、実際の使用可能年数から切り離され、経済政策や課税政策の
影響を大きく受けているためです。

その点では、金融機関が物件の収益が生じる期間を法定耐用年数以内にとして審査するのは、
個人的に全く理解不能です。
法定耐用年数の本質を完全に無視し、単にお上が使っているので使っているだけ
ではないでしょうか?

法定耐用年数とは、建物の取得コストを経費計上するための基準で、
それ以上でもそれ以下でもありません。

税理士、不動産経営アドバイザー
税理士ですが、一都三県にて不動産経営を第2の本業として取り組んでいます。
不動産の最大の経費は税金ですが、税金だけ見ていても上手く行きません。徹底的な数値化と経験に基づき、個人・法人・銀行・追加取得・売却をトータルに判断するお手伝いをしています。

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