不動産投資家はとにかく経営者を目指すべし

いままで、不動産投資は読んで字のごとく、投資として考えられてきました。

この結果、株式投資や不動産投資信託(REIT)、FXや仮想通貨とも比較される
ようなこともありました。

しかし、これからは不動産投資は事業として、不動産投資家は事業家として
振る舞い、考えることが求められる時代になってくるでしょう。

高収入=好条件融資ではなくなった

これまで高い給与が有利であった背景

ここしばらくのトレンドとしては、高所得のサラリーマン(ウーマン)が
都銀や地銀から好条件で融資を受けて不動産投資を行うというものでした。

別に資産として貯金がなくても、給与年収が高いというだけで融資を結構
受けられたものでした。
また、その際の金利も低く、1%台から場合によっては1%を下回るような
条件で借入をできた人もたくさんいたのです。

このため、多くのサラリーマン(ウーマン)が不動産投資に取り組んで
きました。

このように給与収入を持つ人がなぜ簡単に不動産投資を始められたかと
いうと、安定した給与収入を借入金の返済原資としてカウントしていた
からなのです。

住宅ローンと似たような話ですが、仮に物件の空室が埋まらなくても、
最悪毎月の給与から借入金を返済させれば、貸付けが焦げ付かないので
貸出先として安心だという判断を銀行がしていたのですね。

ここでは、不動産投資家なのか、不動産賃貸業社なのかは正直
あまり大した論点ではありませんでした。
高い給与をもらっているなら、借入金の返済に困らない以上
別にどっちでも良かったからです。

このような環境では、不動産投資を事業として行うという意思を持たなくても
何の問題もありませんでした。
実際、事業であるという心構えがあってもなくても、銀行は給与収入の高低、
いわゆる属性で融資を判断していたからです。

給与収入を持っている人が、副業あるいは投資というイメージのまま
取り組むことが可能な環境があったと言えます。

しかしながら、ここ数ヶ月でその大前提が大きく変動しています。

それは、銀行が給与収入を返済原資として見ることを控え始めている
ということです。

最近の融資審査の特徴

最近多くの銀行は、給与収入が高いだけでは融資をしなくなっています。

これは、かぼちゃの馬車問題が大きく影響しています。

つまり、収益用不動産に対する融資は、その物件の収入によって返済できるか
を検討するべきであって、給与を返済原資として考えるのは、債務者保護に
ならないという考え方が広がっているようです。

確かに、かぼちゃの馬車問題では、全く収入を産まなくなった不動産の
借入を返済するために、多くの人が給与収入を充てています。
それ自体は悲惨なことであり、社会問題化もしています。

しかし、銀行は最終的にはそうするために高額所得者に貸していたのです。

物件から返せなくなったときには、給与から払わせる。
まさに銀行の目論見通りというわけです。

ただ、その目論見が社会的に批判を受け、また金融庁も問題視している
ことから、変更を迫られているというわけです。

では、今後はどのように不動産が融資されるのでしょうか。

それは、

  1. 不動産単体の収支がきちんと回るかどうか
  2. 不動産の担保価値がきちんと確保されるかどうか

ということです。

非常にまっとうといえばまっとうです。

本来、給与から不動産の借入の返済をするという前提は本来
おかしなものなのですが、この変更によって給与が高い=融資を受けられる
という大前提が崩れてしまいました。

事業としてきちんと成立するのかが重要

つまり、これからは、不動産投資ではなく、不動産賃貸業として
しっかり運営できるかという視点が非常に重要になってきます。

その不動産を事業としてきちんと運営できていけるかが問われてくる
という訳ですね。

要するに、自分が経営者として不動産を問題なく運営できていける
ということを、示していく必要が出てきたわけです。

将来的な経済的自由を確保するには

給与収入に頼らない生活を目指すために重要なこと

多くの不動産投資家の方と話していて感じることなのですが、
多くの方は最終的に今の会社を辞め、専業大家になることを目指している
ように感じられます。

もちろん、程度の差はあるものの、高額の給与を得ることの対価として
精神労働や長時間労働に耐えている方が多く、労働を軽くする=給与が
なくなるか低くなる状況を目指しているようです。

では、その給与収入が低いか、無い状況下で生じる問題は何かと言うと、
果たして銀行が融資を継続してくれるかどうかです。

なぜならば、不動産をフルローンで保有しているのならば、必ずどこかで
デッドクロスを迎えます。また、建物は経年劣化も進みます。
このため、デッドクロス対策や資産の入れ替えとして物件の追加取得や
組替を検討しますが、いづれにせよ銀行から追加融資を受けなくてはなりません。

会社を辞めたら経済的自由を実現できるのではありません。

会社を辞めても融資を継続して受けられないのであれば、物件の追加取得もできず、
資産の組替えもできないので、いづれジリ貧にならざるを得ません。

これまで銀行は給与収入を当てにして融資してきたのに、それが無くなった
のだから、融資を継続して受けられないのはご理解いただけるでしょう。

 

 

経営者として融資を受ける以外に道はない

では、給与収入がなくなった場合には、何を以て融資を受ける
のでしょうか?

これは、通常の企業と同じく、自ら営む事業の実績によって
融資を受ける以外にありません。

つまり、給与収入を当てにした融資から、事業の中で融資を
返済していくという通常の、普通の企業が受けているのと
同じ融資を受けて行く以外にないのです。

経営者としての信用を銀行から確保し、事業に対して融資を
してもらえるようにする。

そうでなければ、給与収入のない状態で融資を受けることは
できません。

ここでも、経営者としての実績を挙げてゆくことがいかに重要
であるかご理解いただけると思います。

経営者たるもの、黒字を出すことにこだわろう

このように、昨今の情勢からして、不動産投資を投資ではなく、事業として
取り組み、成果を挙げていくことが重要になってきている状況です。

しかし、多くの投資家とお会いすると、そのような意識が非常に希薄である
点が気になっています。

これは、不動産が多くの場合節税と関連付けられている点と関係している
ように思っています。

私も不動産投資本は人並み以上に読んでいると思っていますが、世の中の
不動産投資本においては、不動産のメリットとして節税を強調する内容を
よく見ます。

曰く、

「法人は所得分散効果に優れる」

「法人は個人よりも経費に計上できるものが多いので、節税に使いやすい」

「役員給与と役員社宅でガッツリ節税しましょう!」

「サラリーマンは税後でお金を使うが、不動産を持てば税前でお金を使える!」

これらは、節税のみを考えると何ら間違いではありません。

しかし、経営者としては本来行うべきことではないのです。
なぜならば、これらの節税は黒字を圧縮することによって達成されるからです。

経営者としての能力は、黒字をいかに大きくできるかによってのみ評価されるのです。

大した黒字も確保できていないのに、役員報酬で所得分散だの、役員社宅で
個人法人全体では節税をできていますだの、そのような話は銀行に通用
しません。

黒字を出して返済原資を確保し、自己資本比率を改善することによってのみ
法人の経営者は評価されるのです。

節税で黒字になっていないけど、個人も合わせると節税になっているんですよ
という言説が通用するのは、余程の資産家です。
本来、法人を用いて節税するというのは、資産家向けに開発されたスキーム
だからです。

給与収入も無く、資産も持っていないのに、法人は節税対策で黒字が出ていない。

このような人に、銀行は何を持って融資すればよいのでしょうか?

税金を払ってきっちりと黒字を確保してゆく。

このような、経営者として当然のことを行っていくことで、経営者として継続
して融資を受けられるようになるというわけです。

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