不動産を長期保有できなくなる原因を考える

不動産を長期間保有するということは、不動産投資における重要な前提です。

もちろん多くの方がそう考えているでしょうが、実は長期保有できるように
なっていないケースを散見します。

不動産は必ずしも長期保有する必要はありませんが、長期保有できるように
設計しておくことは重要です。

不動産を長期保有できることは、大きなリスクヘッジになるからです。

先日の記事でも書きましたが、不動産は含み損資産のガチホが有力な戦略に
なるのです。

不動産投資において長期保有が重要である理由

不動産における最も大きなリスクとは何でしょうか?

結局の所、借入金を返済できなくなるというリスクに尽きるでしょう。
借入金を返済できないというのは、つまるところ破産を意味します。

ではなぜ借入金を返済できなくなるのでしょうか?

簡単な話で、以下の二点に該当する場合しかありません。

  1. 物件を売却しても残債を弁済できない
  2. 物件を保有していても、毎月の元利返済ができない

ということです。

この両方に該当する場合に、非常に危険な状態になります。

この中で、最も深刻なのが、

2.物件を保有していても、毎月の元利返済ができない

という状態でしょう。

なぜならば、毎月の元利返済に行き詰まったとしても、売却して残債を弁済
できるのであれば、売ってしまえば良いのです。

この点で相場よりも安く購入できた物件はそれだけでリスクヘッジ
できているといえますね。

一方、売却して残債を弁済できる値段で売れないとしても、保有期間中に
元利返済が問題なくできるのであれば、保有し続ければ良いという話です。

よって、長期間に渡って元利返済を問題なく行っていけるのであれば、
借入金を返済できないリスクというものを大きく軽減することができます。

この、長期間に渡って元利返済を問題なく行っていけるということを、
単純に表現すると、長期保有するということになるでしょう。

このため、「イザというときは長期保有できる」という点が、重要なリスク
回避と言えることはご理解いただけるでしょう。

そいう意味で、不動産投資は物件を長期保有する必要はありませんが、
長期保有できる状況は整えておきたいところです。

長期保有できない状況

空室が埋まらない

最も根本的な問題点は、空室が埋まらないことによる空室損失です。

不動産投資の収入は、「部屋数×家賃」以上には決してありません。

このため、空室はダイレクトに収入が減少するどうしようもない状況です。

収入が減ってしまい、これが建物管理費や固定資産税などの固定費を
割り込んでしまうと、元利返済を行う原資が失われることになります。

空室の埋まらない物件を長期保有することは根本的に不可能です。

このため、空室対策は不動産投資において最も重要なのです。

修繕費や管理費、固定資産税を払うだけで精一杯

反対に、物件が満室であったとしても、直近で大規模修繕が必要であったり、
漏水が頻繁に発生するなどの問題が生じているケースがあります。

購入した物件がすぐに大規模修繕が必要になるような場合では、手持ち資金
から大規模修繕を行う外ありません。
そうできなければ、資金繰りが破綻することになります。

また、雨漏りや外壁の毀損も問題になります。

また、大規模RCでは植栽剪定やエレベーター管理、建物管理などのコストが
想像以上に大きくなり、これを事前に収支計算に織り込んでいない場合、
結構大きな負担として降りかかります。

また、特に地方のRCなどは、固定資産税の負担がかなり大きいケースが
見受けられます。

このように、表面利回りだけで購入判断をしてしまった場合、想定外のコスト
が発生し、収支が厳しくなるケースは以外に多いです。

大規模修繕や経常的に発生する管理コストは、事前にシミュレーションに
織り込んだ上で判断しなければなりません。

デッドクロスが発生し、税金を払えない

満室運営で、かつ家賃で固定費を十分支払えていたとしても、税金が払えなくなる
のがデッドクロスという状況です。

デッドクロスとなった場合、税引前キャッシュフローのすべてを使っても
税金を支払うことができません。

このような状況となった場合は、物件の運営の良し悪しに関係なく資金繰り
が厳しくなってしまうので、物件を売却する、さらに追加で物件を取得する
などの対策を取らざるを得ません。

正直、一番しんどい状況と言えます。

長期保有するために必要な対策

空室対策を事前に考えておく

空室対策で最も重要なことは、立地です。

これは必ずしも市街地中心部や都心で物件を購入しようという意味ではなく、
賃貸需要が存在しているエリアが重要であるということです。

不動産は本当に建っている場所で状況がガラッと変わることがあります。

人気ターミナル駅の近隣なのに、詳しく調べてみると地元の人に嫌われている
エリアや、道路一本超えただけなのに賃貸需要が減ることもあります。

首都圏であれば多少問題があっても人が多いので力技で満室にすることも
可能ですが、地方になるとかなり大きな問題になりがちです。

このあたりは、正直わからないので、事前に賃貸仲介業者にヒアリングする
ことが重要になってきます。

また、この面でドミナント戦略と言われる、購入する地域を限定する戦略
は有効であると言えます。

大規模修繕、管理コストは事前に試算する

大規模修繕や管理コストも事前に十分試算することができます。

大規模修繕は、物件の築年数と過去の大規模修繕の状況を確認すれば、
いつどのような修繕が必要になるのかおおむね判明します。
そのために必要なコストをどのように確保するか、事前に確認する
必要があるでしょう。

また、建物管理コストは物件規模によって概ね発生する費用はわかります。

売り主が支払っている金額があるはずなので、それを土台にしても良い
ですし、全国どこでも建物規模に対する管理コストはほぼ一定なので、
事前にある程度調べれば十分に予測することが可能です。

固定資産税などは、売り主の納付書を見ればすぐに分かります。

「足の早い物件です!」という煽り文句に惑わされず、腰を据えて検討
しなければなりません。

デッドクロス対策は購入時に行う

デッドクロス対策は、物件の問題というより、税理士が確定申告でどのように金額
処理をするのかという側面が強いです。

同じ物件であっても、3年後にデッドクロスが来るか、15年後にデッドクロスが
来るのかは、確定申告の内容次第で変わってきます。

このデッドクロス対策は購入した最初の確定申告時にしか行なえませんので、
この点を意識して税理士にオーダーしていく必要があるでしょう。

デッドクロスで困っている人は、だいたい確定申告を税理士に丸投げしていますし、
税理士に大した報酬を払っていません。

デッドクロス対策は、以下記事をご参照ください。

購入前に考えることが最も重要

このように考えてくると、不動産の長期保有を阻害する要因、つまり
キャッシュフローが回らないという事態を避けるための検討は、全て購入前
に行うことができるとわかります。

事前に物件の情報を収集し、正確なシミュレーションを行うというプロセスを
減れば、不動産で劇的に失敗するというリスクはあまり考えられません。

不動産投資で失敗している人の大体の傾向は、営業パーソンなどの他人の言うがまま
に物件を購入しているということです。

もちろん、営業パーソンが騙そうという意図があったかもしれませんし、本当に良い
物件と信じていたかもしれません。
実際、物件の収支計算のできない営業パーソンは多く、また日頃からクズ物件を
よく見ているせいか、大した物件でもないのに、すごく良い物件だと思い込んでいる
ことも多いのです。

このため、購入してリスクを背負う投資家は、自ら判断材料を集め、決断する
必要があります。

そして、購入前にこの手間をどの程度かけたかという点で、不動産投資の成否は
概ね決まると言っても過言ではないでしょう。

 

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