不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン?

不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンと言われます。

ですが、本当にそうでしょうか?

なんだかイメージとして語られている点も多いのですが、
なにがミドルなのかは正直良くわかりません。

世の中の言説には首をかしげたくなるものも多く、
少し考えてみようと思います。

なお、以降「リスク」という言葉を多用しますが、基本的には
「振れ幅」のような意味で使っています。

ミドルリスク・ミドルリターンの定義

預金はローリスク・ローリターン、株式投資や信用取引は
ハイリスク・ハイリターンなどといいますね。

ここでいうリターンは、投資したことによる儲けと考えて間違い
ないでしょう。

一方、リスクとはなにかと考えると、これは、「価格変動リスク」
と「レバレッジリスク」の2つに分解できるでしょう。

投資対象の価値変動リスク

価値変動リスクとは、時価の変動の激しさです。
つまり、得をするにせよ損をするにせよ、振れ幅が大きければ
価値変動が大きく、振れ幅が小さければ価値変動は小さいといえます。

これを、ボラティリティと言ったりもします。

時価の変動が激しければ激しいほど、投資元本を既存したり、負債が
発生するリスクは上昇するといえます。

つまり、例えば過去の実績から10%程度の価値変動可能性を有する
100万円の株式を購入した場合、最も儲けて110万円、最も損をして
90万円ということです。

90万円になると投資元本を既存していますが、所詮は10%程度ですね。
この場合は、価値変動リスクも低いといえます。

一方で、価値変動リスクが70%であれば、上手く行けば170万円となり
大儲けですが、下手をすると30万円になってしまい、大損です。

このように、得にせよ損にせよ、価格の振れ幅が大きい投資は基本的に
ハイリスクであり、故にハイリターンと考えられます。

というのも、ハイリスクもハイリターンも価値変動が大きいことの
裏表であって、コインの両面だからです。

FXや原油先物などの相場が鉄火場などと言われるのも、皆がハイリスクを
犯してハイリターンを追求しているからでしょう。

レバレッジリスク

レバレッジリスクとは、投資に仮に失敗した場合、投資の元本を失う
のみならず、借金まで背負ってしまうリスクです。

たとえば、株式の信用取引は基本的にレバレッジ3倍ですので、
100万円の元本を元手に、300万円の株式を購入したとします。
いわゆる、信用買ですね。

なぜ100万円しかないのに300万円分購入できるのかというと、
早い話が200万円は証券会社から借りているのです。借入ですね。

この後、300万円であった株式が100万円まで下落してしまいました。

こうなると、▲200万円の損なわけですが、もともと元本は100万円
なので、追加で100万円を支払わなければなりません。

こうなってくると、100万円の元本が失われたのは当然として、
さらに100万円を支払う負債を追ってしまうというわけです。

当然ですよね。証券会社から借りた200万円のうち100万円を失った
のですから、それは証券会社に自分で返さなければなりません。

このときのキーワードが、レバレッジです。

つまり、自己資本の何倍もの投資を、他人資本つまり借金をすることで
行うことができるということです。

そして、その損失が他人資本まで毀損すると、他人資本の毀損分は自分
が補填しなければならないというわけです。

このレバレッジは、基本的には価格変動リスクを増幅させるという
効果をもたらします。

先程の例ですと、300万円の株が100万円になったのは、67%の
価格変動ですが、損失割合としては200%の損失になります。

このように、レバレッジをかけた分、価格変動リスクが大きく
損失として跳ね返ってくるのです。

投資のリスクとは、価格変動とレバレッジの掛け算

このように考えてくると、投資のリスクというものは、価格変動リスクと
レバレッジがどのように組み合わされるかによって左右されるといえます。

例えば、ハイリスクハイリターンと言われる株式も、現物取引と信用取引
は全く異なります。
価格変動リスクは同じ株式なので同じとして、異なるのはレバレッジです。

株式は、現物だといくら価格変動リスクが高くとも、最悪投資元本を失う
という所止まりです。決して借金が残るということはありません。

一方、信用取引では前述の通り借金を追うリスクがあります。
これは、信用取引がレバレッジリスクを追っているためです。

また、株式でも信用取引と先物取引ではレバレッジリスクが異なります。
というのも、信用取引は自己資金の3倍まで投資できますが、先物取引は
10倍以上投資できます。

さらに、ハイリスクで名高いFXも、もちろんボラティリティリスクは高いの
ですが、レバレッジを掛けなければ最悪自己資金を失って終わりです。

しかし、海外の口座等を用いれば、100倍を超えるレバレッジをかけることもでき、
これがFXで破産者や大金持ちが発生する所以といえます。

そう考えると、価格変動リスクが通常の投資リスクで、レバレッジリスク
は投資のリスクを劇的に増幅する機能を持つということでしょうか。

結局、投資をする場合は、この価格変動リスクを抱え、かつレバレッジ
によりそのリスクを何倍にでも拡大できるということでしょう。

改めて、ミドルリスク・ミドルリターンを考えると

ということは、ミドルリスク・ミドルリターンの投資とは、儲けの
リターンはほどほどだけども、価格変動リスクやレバレッジリスク
もほどほどな投資だという意味になるでしょう。

では、不動産投資がミドルリスク・ミドルリターンというためには、
このリスクとリターンが他の投資手法に対しどのように異なるかの
検討が必要です。

特に、リスクに関する検討が不可欠です。

リスクのコントロールこそ投資における核心です。

はたして、不動産投資は本当にミドルリスクなのでしょうか。

不動産の投資のリスク検討

価格変動リスク

不動産の価格変動リスクが緩やかであるというのは、事実でしょう。

これは、要するに資産性と収益性が価格を下支えするからだと考えています。

例えば、資産性の観点でいうと、土地には価値があります。
もちろん、日本も場所によっては土地の価値が失われていますが、首都圏
や政令市などの大都市圏では土地の価値が厳然と存在します。

このため、例えば土地値が5千万円あるアパートが、無価値になってしまう
可能性というのはあまり考えられません。

また、収益性の観点でも、価格の下支えが考えられます。

というのも、例えば東京都内では、どんなにボロボロでも、あるいは土地が
旗竿地や、下手をすると無接道などの価値が低いものであっても、利回りが
10%を超えてくると売れています。

これは、都内で10%という収益性が破格のものであるため、資産性に難があっても
買いたい人がいますし、逆にこれが20%でないと売れないという事態も想定
しにくいものです。

結果として、価格変動リスクは低く抑えられると考えられます。

ただ、不動産の売買が相対取引であるため、相場よりも高値の物件を掴んでしまう
というリスクがあります。

相場より高値の物件を購入するとなると、その相場と売買価格の差額は一瞬で損失
となりますので、注意が必要です。

不動産の価格変動リスクが低いというのは、あくまで相場通りに物件を購入できた
場合と考えましょう。

まぁ、相対取引に相場なんて無いといえばそのとおりなので、ここが一番難しい
のだとは思いますが。

 

レバレッジのリスク

価格変動リスクとレバレッジ

実は、不動産投資においては、このレバレッジリスクが極めて大きく
なります。

不動産を購入する際には、誰しも銀行融資を受けます。

このため、本来ミドルリスクなはずの価格変動リスクが何倍にも
拡大されてしまうのです。

例えば、1億円の物件を現金で購入したケースと、頭金100万円の
ほぼフルローンで購入したケースを考えてみましょう。
100万円で1億円の物件を購入しているので、100倍のレバレッジです。

FXも真っ青なハイレバレッジですね。

ここで、物件価格が1千万円下落したと考えます。

1億円を現金で取得していた場合は、価格にして10%の損失です。
大した価格変動ではないと思えますね。
大した額でなくとも、自己資金が減っただけなので破産はしません。

一方、フルローンで考えても1千万円のマイナスです。
この場合、投入した100万円の頭金に対して1,000%のマイナスとなります。

100倍のレバレッジをかけているので、価格が変動した際の影響も
100倍になるのは当然といえます。

ここで問題となるのが、手許現金の有無でしょう。

たとえば、現金を1億円持っている人が、100倍のレバレッジをかけて
いたところで、頭金の100万円に対する損失割合はあまり重要では
ありません。

100万円の10倍(1,000%)失ったところで、手元現金1億円から見れば
10%です。

つまり、実質的なレバレッジは0%であったのです。

一方で、この頭金100万円が全財産であった人はどうなるでしょうか?

100万円を失うのみならず、900万円の純負債を背負うことになります。
というのも、借金は1億円ある一方、資産は9千万円になったからです。

おそらく、不動産の価格が10%変動することはほとんどないでしょうから、
そういう意味、つまりレバレッジがない状態ではたしかにミドルリスク
といえます。

しかしながら、ここにレバレッジの要素が加わると、全くミドルリスクな状態
ではなくなるのだという点をご理解頂けると思います。

結局の所、レバレッジが大きすぎるのです。

100倍のレバレッジをかけるなら、どんなローリスク投資もハイリスクに
できてしまうというのが正直なところです。

では、融資を受けての不動産投資は危険なのかと言われると、そうとも
いい切れません。

不動産にはロストカットが無い

一方で、不動産投資がFXも真っ青なハイレバレッジだとしても、FXや
先物取引にはない非常に重要なメリットが存在します。

それは、不動産投資にはロストカットがないということです。

FXや先物取引においては、ロストカットという仕組みが存在します。

通常、株や為替でどれだけ損をしたとしても、自己資金で購入していた
なら、持ち続ければ損が確定することはありません。
(まあ、含み損を抱え続けることは投資としては悪手らしいですが)

一方、レバレッジをかけていればそうはいきません。

一定程度損失が発生したタイミングで、証券会社が強制的に株などの
投資対象を売却し、損失を確定してしまいます。

そして、このときの損失が証券会社から借りた部分まで食い込んだ場合、
証券会社に追加でお金を払います。これが追証ですね。

これは、まさに強制的に行われるので、含み損を抱えたまま持ち続ける
ことはできないのです。

では、不動産投資はどうでしょうか?

不動産の場合、例えば1億円の物件が9千万円に値下がりしたとしても、
あるいは3千万円になったとしても、その物件をすぐさま売却する必要は
ありません。

そのまま保有を継続することができます。

これは、不動産投資の融資に、「値下がりしたら返済する」という決まり
が無い事によるものです。(このような決まりをコベナンツ条項といいます)

不動産の値段が下がったとしても、銀行は融資の返済を求めることはありません。

結果として、値段が下がった不動産を持ち続けることができるのです。

含み損を抱えた不動産を持ち続けてどうなるのか?と考えがちですが、
ここで不動産のインカムゲインが効いてきます。

キャッシュフローと借入金の元金返済により、レバレッジをどんどん
引き下げていけるのですね。

今すぐに売ったら確実に損をするなら、売らなければよいのです。
持ち続けて、キャッシュフローと元金返済によりレバレッジを引き下げ
これによってハイリスクな状態を脱することが可能です。

これは、他の投資では見られない大きな特徴です。

この、不動産の保有によるインカムゲインが、価格変動リスクをどの
ように相殺するかは、以下の記事で考察しています。

不動産がロストカットされるタイミングとは?

不動産投資に制度としてのロストカットはたしかに無いのですが、
不動産のロストカットをせざるを得ない局面も考えられます。

それは、不動産のキャッシュフローで、借入金の返済ができなくなったか、
税金を支払えなくなったような場合です。

この場合は、銀行や国が物件を差し押さえ、競売にかけることで強制的に
売却することになります。

ではこのようにならないためには、物件のキャッシュフローで管理費や
修繕費を支払い、さらにその上で銀行に金利と元金を支払い、最後に
税金も支払える状態を維持する必要があります。

このような状態を長期間維持できるのであれば、あとは時間とともに
レバレッジが低下するのを待てば良いのではなかと考えます。

通常の投資では悪手である含み損資産の長期保有、いわゆる「ガチホ」が
不動産投資では非常に有効です。

長期保有できる体制が大きなリスクヘッジになる

このように考えてくると、以下のように要約できそうです。

◯ 価格変動リスク

不動産の価格変動リスクは基本的に小さい
ただし、適正な値段で購入できた場合に限る

◯ レバレッジリスク

レバレッジリスクは大きくなりがちだが、長期保有に耐えられれば
インカムによりレバレッジを引き下げることができる

このように考えてくると、不動産を適正な値段で購入し、かつ長期保有できる
体制を整えられれば、レバレッジにかかわらず、概ねミドルリスクミドルリターン
と言えそうです。

この長期保有できるという部分が、不動産投資の恐らく最も重要なポイントだと
思いますので、その点だけはおろそかにはしたくないですね。

税理士、不動産経営アドバイザー
税理士ですが、一都三県にて不動産経営を第2の本業として取り組んでいます。
不動産の最大の経費は税金ですが、税金だけ見ていても上手く行きません。徹底的な数値化と経験に基づき、個人・法人・銀行・追加取得・売却をトータルに判断するお手伝いをしています。

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