青色事業専従者給与の注意点 税金と社会保険

個人で不動産を保有している場合、青色事業専従者給与を支給して
節税しようと考えられる方も多いでしょう。

特に、配偶者が専業主婦であったりすると、専従者になれる可能性が
あるので、検討の余地はあります。

しかし、予期せぬ負担増になることもあるので、事前に慎重に検討しましょう。

以前青色事業専従者給与は以下の記事に記載しましたが、今回はデメリットを
深掘りしてみましょう。

青色事業専従者給与とは?

不動産投資家を含め、個人事業主は家族に対して給与を出すことができません。
出すこともできますが、その給与を経費にできないのです。

これは、家族に給与を出すといくらでも税金をへらすことができるため、それを
防ぐ目的と考えられます。

しかし、個人事業では実際問題家族が事業を手伝っていることも多く、これに
全く給与を出してはならないとなると非現実的。
ということで、特例的に、青色事業専従者給与という給与の支給は経費にすること
が認められているのです。

青色事業専従者給与が認められる条件は、以下のようなものです。

  1. 生計を1にする配偶者その他の親族であること
  2. もっぱらその事業に従事していること
  3. 青色事業専従者給与届出書の記載金額以内の給与であること
  4. 労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、
    その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の状況に
    照らし労務の対価として相当であると認められること

専従者給与を支給して経費にするためには、以上の条件のすべてを満たす必要が
あります。

ただ、満たせば個人の不動産投資家などでも給与を支給できて、節税メリットが
享受できるかと言えばそれほど単純なものではありません。

専従者給与の支給により、負担が増える面もありますので、節税メリットとの
比較検証が必要なのです。

メリットばかりではない。負担の増加に要注意

青色事業専従者給与を支給した場合、以下のような負担が生じる可能性があります。

給与を受ける本人の所得税・住民税

給与を家族に支払った場合、当然ですが、その家族に給与収入が生じます。

ということは、所得税や住民税の納税が発生するということです。

所得税が生じない給与の下限は、103万円です。
103万円の壁といったりしますよね。

これは、給与所得控除65万円と基礎控除38万円の合計が103万円であるため、
103万円までの給与の支給であれば、所得税が発生しないのです。

ちなみに、住民税は基礎控除が33万円なので、98万円以上で住民税が発生します。

このため、毎月8万円の給与支給として、年間で103万円(98万円)未満に抑えよう
とされる方も多いですね。

ただ、その場合、それほど定額の給与でもメリットがあるか検討が必要です。
というのも、次に記載する通り、青色事業専従者給与を支給すると、配偶者控除や
扶養控除が受けられなくなるからです。

給与を支払う側で、配偶者控除や扶養控除が受けられない

配偶者がいる方は、配偶者控除38万円を、子供や親などの扶養親族がいる
場合は、扶養控除を38万円、受けられます。

基本的には、皆さん年末調整か確定申告にて控除を受けます。

しかし、青色事業専従者給与を支給した場合、その受けた人の分の控除は
無くなるのです。

例えば、配偶者に青色事業専従者給与を年間50万円支給した場合、それだけで
配偶者控除38万円はゼロになるのです。

結果、差し引き12万円の節税にしかならないということですね。

土地利子の特例などにより、専従者給与が経費にならなかったりするともう
最悪以外の何物でもありません。(そういう失敗も結構見ますが)

もちろんそれでも節税効果が有ると言えばあるのですが、青色専従者給与のみ
の節税効果を期待していた場合は、肩透かしをくらうことになります。

ただ、平成30年より、配偶者控除の規定が改正され、特に年収1,22万円
を超える方は配偶者控除の適用除外となりましたので、その分専従者給与の
メリットが増加しているという点があります。

給与を受ける人が、社会保険に加入しなければならない可能性

通常、サラリーマンの配偶者で収入のない人は、自分で社会保険を収めていません。

これは、社会保険の扶養になるためですよね。

しかし、年間で130万円以上の収入のある人は、社会保険の扶養から外れるのです。

このため、自分で新たに社会保険に加入しなければなりません。

個人事業の従業員ですので、多くの場合では、配偶者が新たに国民年金と
国民健康保険に加入することになるでしょう。
(ちなみに、個人事業の場合は従業員5人未満なら厚生年金に加入する必要はありません)

いままで社保の扶養で払わなくても良かったものが、払う必要が出てくるので、
負担の増加になりますよね。

青色事業専従者給与は、基本的に他に仕事を持っている人は受け取れないので、
他の職場で社保に入っているというケースもありません。

基本的には自営業者の配偶者などを想定した制度ですので、その場合は弊害は無い
のです。

しかし、サラリーマンの配偶者は社会保険上の扶養というメリットを得ているので、
それを放棄するのは結構負担が大きいですね。

もちろん、給与の支給を130万円未満に押さえれば良いという話ですが、その場合は、
配偶者控除が無くなったりするデメリットを考慮すると、結構微妙ですね。

会社の家族手当や扶養手当が無くなる可能性

昔ながらの大きな会社によくあるのですが、家族手当や扶養手当などが給与に
上乗せされて支給されていることがあります。

この家族手当などの支給条件も、概ね税や社保の基準に平仄をあわせている
ことが多いようです。

つまり、配偶者の年収が130万円未満とか、100万円未満とかですね。

この点、青色事業専従者給与を出した場合、会社の内規に引っかかり、
各種手当を受けれなくなる可能性もあります。

この点は、今手当を受けている方は注意しておくべきでしょう。

あなたの事業は、本当に利益が出ていますか?

また、先程触れたとおり、個人投資家の場合は、土地利子の損益通算に関する
特例に注意しましょう。

土地利子の損益通算の特区例に関しては、以下記事で解説しています。

この規定により、土地値の築古木造アパートを高金利の銀行で有しづけしている場合、
赤字をいくら計上しても、ほとんど赤字として使えないケースが見受けられます。

このような場合、いくら専従者給与を支給したところで、節税効果はほとんど
期待できないでしょう。

このように考えてくると、専従者給与を支給してどの程度のメリットが有るのかは
ある程度慎重な検討が必要になることがご理解頂けるでしょう。

節税だけで突っ走らないように注意しましょう。

税理士、不動産経営アドバイザー
税理士ですが、一都三県にて不動産経営を第2の本業として取り組んでいます。
不動産の最大の経費は税金ですが、税金だけ見ていても上手く行きません。徹底的な数値化と経験に基づき、個人・法人・銀行・追加取得・売却をトータルに判断するお手伝いをしています。

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