スルガ銀行が物納を認める!シェアハウスオーナーの税金はどうなる?

日経新聞にスルガ銀行がシェアハウスオーナーに物納(代物弁済)
を認めるという記事がでていましたね。

記事の内容だけだと詳細はわからないのですが、おそらく、
スルガ銀行が保有するシェアハウス貸付金を、サービサーに
代物弁済ありの条件で売却するという感じでしょうか。

スルガに代物弁済するにせよ、サービサーに代物弁済するにせよ、
検討しなければならないのは、物納するオーナーにどのような
税金が発生するかですね。

結論を先取りすると、

  1. 代物弁済するシェアハウスの時価で譲渡所得課税(多分納税はゼロ)
  2. 代物弁済するシェアハウスの時価と消滅する債務額の差額は債務免除益課税
  3. 債務免除益課税を非課税にする方法を検討する(損害賠償金?資力喪失?)
  4. 消費税も発生する可能性あり

という流れになるでしょう。

一つづつ検討していきましょう。

代物弁済時に生じる譲渡所得課税

代物弁済が譲渡所得になるわけ

代物弁済とは、民法では以下のように定められています。

民法第482条

債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

つまり、本来シェアハウスの購入をする際、オーナーはスルガ銀行と
金銭消費貸借契約を結んでいるはずですよね。

この場合、その債務は「金銭」で返済しなければなりません。

しかし、シェアハウスオーナーとスルガ銀行(又はサービサー)が合意すれば、
金銭以外のものでの返済が認められるということです。

ただ、通常債務を金銭で払った場合、当然税金はかかりませんよね?
当たり前ですね、借金を返しただけですから。

しかし、代物弁済の方法により借金を返した場合、譲渡所得が発生します。

所得税法第33条

譲渡所得とは、資産の譲渡(略)による所得をいう。

岡山地裁平成17年6月7日判決

所得税法33条1項は、「譲渡所得とは、資産の譲渡(略)による所得をいう」と規定しているところ、同項にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいうもので、強制競売及び代物弁済による資産の移転も同項所定の「資産の譲渡」に含まれると解される。

このように、代物弁済は所得税法上、資産の譲渡に該当しますので、
譲渡所得課税の対象になるのです。

では、今回はどのように課税されるのでしょうか?

代物弁済の税金の計算方法

譲渡所得の計算は、通常以下のように行います。

「不動産の売却収入-不動産の取得費=譲渡所得」

こうやって計算した譲渡所得に、税率をかけて税金を計算します。

しかし、今回は代物弁済ですから、売却金額がありません。
どのように計算すればよいでしょうか。

所得税法第36条

その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

このように、所得税を計算する際の「収入金額」には、受けた経済的な
利益の価格が含まれるわけです。

代物弁済による経済的利益とは何でしょうか。

それはもちろん、もう借金を返さなくても良い、つまり借金を
チャラにしてもらえたということです。
とすると、代物弁済によって、借金がなくなったことになりますので、
そのなくなった借金の元本や金利が収入金額に該当してくるというわけです。

債務額よりシェアハウスの時価が小さいとどうなる?

通常は代物弁済によって消滅した債務額が収入金額となるのですが、
今回はそうはならなさそうですね。

というのも、債務額よりも、代物弁済するシェアハウスの時価が小さいからです。

競売の状況などを見ていると、だいたい40%くらいになっていますよね。
1億円のシェアハウスの時価は4千万円といったところでしょう。

このようなケースでは、消滅した債務額は1億円ということになりますが、
では収入金額が1億円かというとそうではありません。

このケースでは、収入金額はシェアハウスの時価である4千万円です。

なんでやねん、経済的利益は債務の消滅であって、1億の債務が消滅
したやないか!1億円が経済的利益や!

と思われるかもしれませんが、所得税法第36条2項を見てみましょう。

所得税法第36条

その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする

税法特有の用語ですが、税法における「価額」とは、一般で言う「時価」を意味します。

つまり、経済的利益を受けた場合の収入金額は、その経済的利益の時価なのです。

では、今回のシェアハウスの代物弁済をした際の、債務の「時価」は
いくらだったのでしょうか?

それは、シェアハウスの時価ですよね。

つまり、本来スルガ銀行は1億円の請求権を持っているのに、それを4千万円で全額チャラに
したということは、その債務の実際に回収できる金額を4千万円と見たということです。

債務の時価とは、取りも直さず回収可能金額であるとすると、代物弁済時点の
スルガ銀行の債務時価は、1億円ではなく、4千万円だったのです。

つまり、代物弁済によって受けた経済的利益とは、時価4千万円の債務消滅になりますから、
収入金額も4千万円になるという道理ですね。

譲渡所得課税はおそらく生じない

というわけですから、おそらく譲渡所得の課税は生じないでしょう。

というのも、オーナーは物件を1億円くらいで買っているはずだからです。
スルガ銀行の融資はフルローンでしたからね。

つまり、譲渡所得を計算してみると、

「収入金額4千万円-取得費1億円=▲6千万円」

となり、譲渡所得は大赤字ですから、譲渡所得税も生じないでしょう。

しかし、厄介なのが次の債務免除益課税です。

債務免除益の発生

譲渡所得税が発生しないというのは、実に結構なことです。

しかし、そのせいでより厄介な存在が出てきます。

そう、債務免除益です。

先程の例で考えると、1億円の債務を、4千万円でチャラにしてもらえた
というわけなのです。

この差額の6千万円が何なのかというと、債務免除益以外の何者でも
ありませんね。

債務免除益については、以下の記事で詳解しているので、詳細は
割愛します。

この記事で解説しているように、債務免除益は基本的に所得税
が課税されます。
6千万円の債務免除を受けたなら、6千万円の所得が発生するのです。

私の推測ですが、おそらく一時所得でしょう。

そうなると、一時所得ということで多少の軽減はありうるでしょうが、
基本的には給与等との総合課税ですから、納税額は2千万円近くに
なりかねません。

お金が手に入ったわけでもないのに、現金で2千万円の納税なんて
できるはずがありません。

こうなってくると、スルガ債務は免除されたが納税で破産という
話になりかねません。

それを回避する方法を検討しなければなりませんね。

債務免除益課税を回避する道を探る

債務免除益に対する所得税課税を回避する道はおそらく次の2つです。

  1. 債務免除益が損害賠償金である場合
  2. オーナーが資力喪失状態と認められる場合

一つづつ検討しましょう。

債務免除益が損害賠償金となる道

所得税には、受け取っても非課税になる所得がいくつか認められています。
その一つが、損害賠償金です。

所得税法第9条1項

次に掲げる所得については、所得税を課さない。
1~16省略
17 保険業法第二条第四項に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの。

所得税法施行令第30条

法第9条第1項第17号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するものとする。
一 損害保険契約に基づく保険金、生命保険契約又は旧簡易生命保険契約に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金
二 損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金
三 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金

つまり、不法行為により受けた損害に対する損害賠償金は、所得税がかからないのです。

あくまで、先行して受けた損害を補填するだけでプラスマイナスゼロですから、
課税できないという理屈ですね。

以前スルガ銀行がアナウンスしていましたが、スルガ銀行の元本カット基準も基本的には
この規定を意識していたようで、不正行為の有無が論点になっていました。

2019年5月15日スルガ銀行リリース
シェアハウス向け融資およびその他投資用不動産融資に関する元本一部カットについて 元本一部カット基準の概要について

・元本一部カットに関する個別のご相談を頂戴した時点でローン返済が困難な状況が存在する(ローン返済を含む物件収支が赤字である)物件であって、ローン契約締結時に当社の不正行為があり、その不正行為とお客さまの投資判断との間に相当因果関係が認められる場合が対象となります。(仮に当社の不正行為があったとしても、その不正行為とお客さまの投資判断との間の相当因果関係が常に認められるわけではありませんので、ご了承ください)

※税務上の取扱いについては、当社の不正行為によりお客さまの資産に生じている損害の補てんとして元本一部カットを実施する場合には、原則として、お客さまに所得税が課税されないことを確認しております

つまり、スルガ銀行側の不正行為が認められ、かつ、その不正行為とオーナーの
投資判断に因果関係が認められる場合は、損害賠償金として元本カットが非課税
だというわけですね。

おそらく、スルガ銀行側で国税に事前照会をしているのでしょう。

ただ、それは確かにそのとおりなのですが、ここで記載されている条件、
ちょっとハードルが高すぎますね。

スルガ銀行側で不正行為が認められ、かつオーナーの判断がその不正行為と高い
因果関係を持つなんてどうやって認定するのかさっぱりわかりません。

オーナーの中にはスルガ銀行の不正行為があった人もなかった人もいる
でしょう。

不正行為のあったオーナーはいいとして、なかったオーナーはスルガから
損害賠償金を受け取る権利があるのだという話にはならないでしょう。

また、民事調停や民間ADR和解斡旋のように第三者がスルガ側の不正行為の
有無を判断してくれるならまだしも、サービサーへの債権譲渡になると、
スルガ銀行側の不正行為の有無を確認しようがなくなります。

おそらく、債務免除が損害賠償金だと認められる人と認められない人が当然出てくるわけで、
一律に損害賠償金で非課税になるかというと、難しいのではないでしょうか。

資力喪失状態の道

債務免除益を非課税にするためには、所得税法第44条の2の
適用を受けるという道もあります。

所得税法第44条の2

居住者が、破産法に規定する免責許可の決定又は再生計画認可の決定があつた場合その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合にその有する債務の免除を受けたときは当該免除により受ける経済的な利益の価額については、その者の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない

つまり、資力喪失の状態にある人が、債務免除を受けたといっても、実際に納税する余力は
無いはずなので、その債務免除益は課税しないということです。

この件も以下の記事で詳解していますので、詳細は割愛しますが、基本的には個別の
判断となるでしょう。

債務免除を受けた時点で資力を喪失しているといえるかどうかは、
まさに個別判断であって、一律にどうこう言えるものではありません。

例えば、シェアハウスのみ保有しているサラリーマンであれば言える
可能性は高いでしょうが、他に金融資産を2億円持っていたり、年収が
数千万円あるようなケースで、シェアハウスの状況のみをもって資力
喪失状態といえるかはかなり微妙でしょう。

このため、この部分も個人の状況に合わせた判断が必要になります。

債務免除益課税は個別判断

このように、シェアハウスオーナーが債務免除益課税を免れるか否かは
オーナーの状況によって変わってくるでしょう。

損害賠償金にせよ、資力喪失状態にせよ、オーナーの状況次第で
判断が別れてしまいます。

事前にしっかりとした検討が必要になるのは言うまでもないですね。

これほど大きな事件だったわけですから、国税庁が取り扱いをアナウンス
してほしいというのが正直なところではあります。

消費税も発生する可能性があり

先程記載しましたが、代物弁済とはあくまで資産の譲渡です。

つまり、消費税が発生します。

シェアハウスの土地建物の代物弁済をおこなったということは、
土地と建物の譲渡をしたということですから、建物の譲渡に
関しては必ず消費税がかかります。

つまり、建物時価✕10%を納税しなければなりません。

ただ、消費税には免税制度があり、2年前の課税売上げが1,000万円未満だと
消費税の納税は免除されます。

通常、シェアハウスの売上は、賃料収入ですから、それだけだと
消費税は免税でしょう。

ただ、

  1. 他に個人事業をしている場合
  2. 個人で太陽光や商業ビルなど課税売上の生じる不動産を保有している場合
  3. 2年前に不動産を売却している場合
  4. 個人で消費税の還付を受けている場合

などでは、代物弁済の2年前の年の課税所得が1,000万円を
超える可能性があります。

こうなると、代物弁済で消費税の納税が必要になるので、
事前にか必ず確認しましょう。

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