スルガ銀行の不動産融資について考える

最近スルガ銀行がよくニュースになっています。

かぼちゃの馬車騒動を発端に、アパマンローンの不適切融資
の問題が発生し、取締役の辞任につながりました。

また、スルガ銀行の融資を受けて苦しんでいる人もよく
取り上げられるようになりましたね。

スルガ銀行の何が問題だったのか、考えてみましょう。

昔のスルガ銀行は大変評判が良い

最近、スルガ銀行の評判がよくありません。

クソ物件、三為、スルガ銀行とそろうと、破滅への片道切符のような
印象すらあります。

最近では不動産投資のブログなどにスルガ銀行で融資を受けることは
避けるべきなどという言葉が並ぶこともありますね。

しかしながら、実は、「昔のスルガ銀行は良かった」という人は意外と
多いのです。

ここでいう「昔の」とは、概ね5年ほど程度前までを指します。

このころ、今ほど他の銀行は不動産に対して融資をしていませんでした。
また、それが故に不動産の値段も今と比べると安かったので、

「買えればどう考えても儲かるけど、融資が出ないので買えない」

という状況だったわけですね。

そんな中、融資していたのがスルガ銀行だったわけです。

現在でも都内の条件の良い物件を検討していると、スルガ銀行の抵当
がついている物件に出くわすことがあります。(抵当権抹消済みも多い)
なるほど、こんな立地の物件をこの値段で買えばそりゃもうかるよな~
という感じの物件が多いです。

この時代のスルガ銀行の評価は、「不動産のことをよくわかっているプロ」
という感じで多くの人に共通しています。

いくら高立地で割安でも、他行が「積算の7割しか融資しません」などと言っている
間に、スルガ銀行はその不動産のポテンシャルを正確に評価し、果敢な融資
を行っていたのです。

そして、他行が不動産融資の積極化に転じたタイミングで借り換えを行い、
大儲けした投資家も多いでしょう。

実際、スルガ銀行の融資は成功への切符でもあったのです。

昔と今、何が変わったのか

不動産融資の活発化

では、今と昔と、何が変わったのでしょうか。

私は、「スルガ以外の銀行が不動産に対して積極融資に転じた」

という点だと思っています。

一部メガバンクと地方銀行が不動産に対する融資を積極化させ、特に
首都圏や地方の高立地の物件はスルガ銀行でなくとも、購入者にある程度
の属性があれば購入できるようになりました。

各地の地方銀行や都市銀行が融資を拡大したことで、良い不動産はこれらの
銀行が低金利で貸出を行うようになったのです。

こうなると、高金利のスルガ銀行に出番はありません。

また、融資積極化により物件の値段が高騰したことで、スルガ銀行の高金利
ではとても回らなくなったという事実もあります。

このため、スルガ銀行は首都圏や地方高立地以外にも融資をしていきます。

地方物件の価格高騰

スルガ銀行といえば地方物件に対する融資で有名です。

当初、地方のRC物件は首都圏に比べて利回りが高く、うまく購入
できればスルガ銀行でも十分儲けることが可能でした。

また、他の銀行の評価額との乖離もそれほど大きなものではなかったので、
後日都市銀行などに借り換えを行い、返済額を圧縮して大儲けした人も
多いのではないでしょうか。

地方の物件の人気も出たことから、投資家の間で取り合いとなり、
融資審査の早いスルガ銀行が重宝されたのです。

一方、スルガ銀行が地方RCにかなり注力することになった結果、
地方のRC物件が高騰することになりました。

というのも、スルガ銀行が融資する金額まで値段を上げて売却という
流れが一般化されたのです。

この様になってくると、表面利回りが10%を切るような地方物件も一般化
してくるわけですが、それでもスルガ銀行は融資をし続けました。

結果、他の銀行の評価額を著しく超えるような物件にも融資を行ったので、
購入した人は収支がキツイけど借り換えもできない、また売ろうとしても
他の銀行の融資が出ないというデッドロック状態に追い込まれるわけです。

つまり、本来スルガ銀行は、他の銀行の融資基準が杜撰なので、本来儲かる
不動産に融資しない状態をチャンスと見、これに融資することで成果を上げた
と考えられます。

しかし、他の銀行が不動産に対する融資を積極化させ、また、スルガの評価額
と不動産相場がタッグを組んで上昇したために、スルガ銀行が融資しても儲かる
不動産が無くなってしまったと言えます。

時代がスルガ銀行を追い越した

結局の所、スルガ銀行で融資を受けて地方物件を購入するという方法は、地方物件
の表面利回りが十分に高いという前提が必要なのです。

正直、表面利回りだと10%は絶対的な最低ラインでしょう。

しかし、そのような前提が失われたあとも、スルガ銀行は融資をし続けたので、
そのような融資を受けたのであれば、困って当然という事態が生じるのですね。

スルガ銀行の金利は今も昔も変わら無いのですが、その金利を払ってでも割に合う
物件はなくなってしまいました。

このように考えると、スルガ銀行が不動産投資の中で果たす役割は本来
失われてしまったのです。

不動産投資に積極的だったスルガ銀行が、世の中に追い越されてしまったと
考えるべきでしょう。
普通の地方銀行や都市銀行で物件が低金利で購入できるのに、敢えてスルガ銀行
で融資を受ける必要性は皆無です。

しかし、それで終わらないのが世の中の面白いところですね。

スルガ銀行で収支が回らないなら、スルガ銀行の融資を使って物件を買わなければ
良いだけの話なのですが、世の中はそう単純ではありません。

新築区分ワンルームのような損失確定商品も販売会社の営業力によって売れている
のですから、収支の回らない地方物件が売れるのもまた道理なのでしょう。

そう考えると、やはり投資家も知識を持って、主体的に判断できるように
なっておくことが、最大の防衛策といえるでしょう。

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