不動産の欲望コントロールには、投資基準が重要

不動産投資において最も重要なことは何でしょうか。

相場よりも割安な物件、好条件の融資、高立地

全て重要ですが、私は

不動産投資において最も重要なことは、投資基準を貫くことだ

と考えています。

不動産投資では、多くの人が欲望に振り回されてしまいます。

投資基準によって、欲望をコントロールすることが重要なのです。

欲望渦巻く不動産投資

不動産投資とは、まさに欲望の渦巻く世界です。

投資家は、別に社会貢献したいから不動産を買うわけではありません。
当然ですが、不動産で儲けるために不動産を購入するのです。

つまり、不動産を購入しているのですが、その裏ではその物件により
どのように儲かるかを考えているわけです。

また、そもそも不動産自体に、所有欲を満たさせる点があることは
意識しておくべきでしょう。

私も感じていますが、土地信仰というか、不動産信仰というか、やはり現物資産
を保有する論理を超えた喜びというものは存在します。

また、投資の初期段階で特に顕著なのですが、不動産によって楽に億稼ぐ
というとんでもない夢を真に受けている人も多いです。

全く資産の無い状態から、数億円の資産を形成し、不労所得によって生きていく
のだというような、無産階級から資本家へ一夜で変貌できるかのような夢です。

このような夢を抱いている方は、とにかく物件を購入したいという欲を
こじらせてしまっています。

実際は、既に土地を持っているならまだしも、フルローンで物件を購入する
要な場合は、その後10年以上かけた自己資本(純資産)の形成過程が必要
になるので、買えば終わりではありません。

買えばキャッシュフローが出て、そのキャッシュフローで遊んで暮らすという
のは、物件を自己資本で購入した場合に可能なのであって、レバレッジを
かけて物件を購入したなら、キャッシュフローの浪費は破産への片道切符です。

しかし、このような不都合な真実は多くの場合無視されています。

これも、目先の欲望に振り回されているということですね。

私も既に何棟か購入し運営もしているのですが、未だに物件を購入する
ときはとてもワクワクします。

そもそも私の投資基準に見合った物件を探し出すだけでも大変な労力を使うの
ですが、そのような物件を見つけ、かつ価格が折り合いそうだとなると
本当に嬉しいのです。

物件のここをこうすればもっとよくなるぞ、何年間でどのくらいのキャシュフローが
見込めるぞなど、話がまとまりそうになればなるほど、このワクワクは大きくなります。

そして、この状態まで来たのに、最後の最後で物件価格が売り主と折り合いそうにない
となると、こちらがすべて譲ってでも取引を成立させたい欲にかられます。

どうせ数百万円のことだし、長期保有前提だから多少利回りが低くなっても良いし
などと自己正当化を始めてしまうのです。

この状態から、金額がまとまらないなら物件を諦めるという判断をすることは
かなり大変です。

欲望を刺激する販売業者

最近は、この欲望を積極的に煽っていく業者も多く見られます。

「頭金ゼロで数億円の資産!」

「不労所得で毎日寝ていても収入!」

「1年間で10億円の資産を作る!」

「将来の年金は本当にもらえるのか不安ですよね!」

「老後に必要な資金は5千万円とも言われますが、本当に今のままで大丈夫ですか!?」

「不動産なら生命保険代わりになりますよ!いざという時資産だけ残る!」

これらは、誰でも見たことのあるキャッチフレーズでしょう。

最初は半信半疑だったとしても、一度不動産会社の無料面談に参加してみると、
既に融資まで内諾の出ている物件を、あなたにだけ特別に公開しますとか
言われてしまいます。

「今購入の決定をしていただけないなら、他の人に回します」
「その場合は、すぐに買い付けが入ってしまうでしょうね」

などと言われるのです。

もうそうなると、いてもたってもいられないというのが人情です。

物件の収支の検討も、周辺の家賃相場の検討も、本来すべきことの一切を
吹き飛ばして、買い付けを入れるように誘導されます。
そして、買い付けを入れたが最後、気が変わらないうちに、例えばその翌日
などには売買契約の締結をスケジューリングされるのです。

こうなってくると、実は営業が無理に押し込まなくても、購入する方が
購入を正当化しはじめるのです。

「確かに古い物件だけど新しい物件はもっと高いしな」

「確かに金利は高いけど、俺の属性だと仕方ない」

「確かに表面利回は物足りないけど、家賃保証付きだというしな」

「何時間も説明してもらって、今更断るのも申し訳ないな」

「これを断ると、嫌われてもう紹介してもらえないかもしれない」

本来、これらのことは購入判断になんの関係もありません。

物件の将来収支を計算し、それが自分の基準にあっていれば買えば良いし、
あっていないのなら買うべきではないのです。

特に、不動産会社に嫌われることを気にしている方も多いのですが、
不動産会社は世の中星の数ほどありますので、一社に嫌われた程度
何の問題でもありません。

いかに欲望をコントロールするか 投資基準の設定

かように、欲望を煽られ、正常な判断ができなくなることは多く、
かつ不動産の営業マンは、正常な判断ができないように誘導してきます。

その時、何が欲望の暴走を抑止するか。

これは

「自分の納得した投資基準を断固として妥協しない」

という信念が必要です。

まずは投資基準を見つけるところから始める

今から不動産投資を始めようとする場合、まずは自分の投資基準を確立
しましょう。

様々な本を読んだり、人の話を聞いたりしていく中で、投資基準は形成
されます。

逆に言うと、投資基準が曖昧な状態で、決して物件を購入してはだめです。

ましてや、投資基準を考えることなく、不動産投資をしてみようと不動産会社を
訪問し、その場で購入の判断をするなど言語道断、自殺行為です。

投資基準が曖昧だということは、その曖昧な部分に不動産会社の営業トークと
欲望がつけ込んできます。

この結果、営業マンの言うがままに自分の基準を形成し、自己正当化し、結果
当初に望まなかった結果を招来してしまうでしょう。

投資基準が固まっていない状態では、どんな物件を見ても、紹介されても、
それは断固として断りましょう。

そもそも、投資基準が曖昧なら、何が良い物件で何が悪い物件なのかの判断も
できないということです。

そのような状態で物件を購入できる方がおかしいのです。

不動産会社からは、「そんなことじゃいつまで経っても買えないよ」とか
言われるでしょうし、露骨に呆れられてしまうかもしれません。
まぁ、そんなことはすべて無視しましょう。

一度設定した投資基準は、誰に何を言われようが貫く

もちろん、投資初期段階においては、投資基準が相場と乖離しており、
不動産会社から呆れられてしまうこともあるでしょう。

そのような際には、行動の中で微調整が必要です。

23区内で築10年のRCで表面利回り10%以上で買えば儲かる!
と言っても、現実的に入手できないでしょうから、現実的でない
投資基準はあまり意味がありません。

目標と現実の調整は不断に必要なのは当然ではあります。

しかし、その投資基準の調整は、不動産会社に言われてその場で調整する
ようでは、基準の意味がありません。

投資基準を持って何件も物件の問い合わせをし、内見をし指値をし、
何回も何回も失敗して、それでやっと投資基準をほんの少し調整するくらいです。

投資基準が現実的ではないとしても、それを貫く方が、現実に合わせて
べた折れするよりも遥かにマシです。

キャッシュフローシミュレーションをしていこう

投資基準とは、投資家の場合とにもかくにもキャシュフローシミュレーションが
必須です。

というのも、投資家の場合はまずは物件からキャッシュフローがでないと
次につながらないからです。

もちろん、土地の資産性は重要なのですが、いくら土地値があるからといっても
世田谷の表面利回り5%の築古アパートを購入しても短期的に収支が合いません。

投資資本を何年で回収できるのか、毎年の税引き後キャッシュフローはどの程度か。
投資総額に対する税前キャッシュフローの割合は?返済比率は?

すべて事前に考えておきましょう。

PDCAを回していく

もちろん、不動産会社周りをせずに完璧な投資基準を作ることは不可能です。

実際に不動産を見て、収支の計算をして、その上で基準を再検討するという
サイクルが必要になります。

まずは読書や良質なセミナーなどからざっくり投資基準をつくり、その状態で
不動産会社を周り、物件を見ていきましょう。

その中で、立地や利回りなどの妥協が必要になってくる場合もあるでしょうし、
当初の基準を固守するという判断もあるでしょう。

その結果、自分で納得でき、安心して購入判断できる物件が何か、概ね分かってくる
ようになります。

このようになってくれば、もはや不動産会社の営業トークによってとんでもない
物件を押し込まれることも無いでしょう。

もちろん、この過程で、本当にもうかる物件を逃していたかもしれません。
しかし、それは問題ではありません。

不動産など星の数ほどあるのですし、基準が不明瞭な中で購入したなら、それで成功
したとしても、それは単に運が良かっただけで、パチンコで買ったようなものです。
次同じように儲からないでしょうし、あるいは失敗するかもしれません。

確実に勝てるという基準を確立すること。

これが不動産投資において最も重要です。

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