今後の不動産投資と消費税① 居住用賃貸建物

昨年令和2年10月以降、不動産投資で消費税還付はできなくなりました。

多くの方はこのことをご存じかと思います。

一方で、昨年10月から適用される改正の内容が今後どのような影響を与えるか、詳細にご存じの方は意外といらっしゃいません。

今回は、令和2年10月以降の消費税大改正により、不動産投資の消費税がどのように変わったのか、しっかりと解説してゆきたいと思います。

消費税還付の封じ込め

今回、消費税還付を封じ込めるために導入された規定は、大きく以下の二つですね。

  • 居住用賃貸建物を購入した場合は仕入税額控除の対象外とする規定の設置
  • 消費税が非課税となる、「住宅の貸付け」の定義の変更

①は金地金売買を用いた消費税還付の封じ込め、②はサブリースを用いた消費税還付の封じ込めのための規定ですね。

さっそく、①から見ていきましょう。

不動産投資で消費税還付ができなくなったワケ

まずは、今回新規に導入された規定を見てみましょう。

消費税法第30条第10項

仕入税額控除の規定は、事業者が国内において行う別表第一第十三号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含む。以下この項において同じ。)以外の建物(第十二条の四第一項に規定する高額特定資産又は同条第二項に規定する調整対象自己建設高額資産に該当するものに限る。第三十五条の二において「居住用賃貸建物」という。)に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。

つまり、「居住用賃貸建物」を購入した場合は、消費税における仕入れ税額控除の対象とならない、ということになります。

これはかなりドラスティックな改正ですね。

仕入れ税額控除は、消費税の根本的な制度の一つです。

消費税とは、そもそも、受け取った消費税と支払った消費税の差額を納税したり還付を受けたりする制度です。

工場の建築を行ったりすると、売上により受け取った消費税よりも、工場建設により支払った消費税の方がかなり大きくなるので、そういう場合には消費税の還付を受けられるというわけです。

この還付を受けられるのも、工場の建築による支払いが、受け取った消費税と支払った消費税を相殺するという、仕入れ税額控除の対象だからですね。

しかし、「居住用賃貸建物」はそもそもこの仕入税額控除の対象外になってしまいました。

そうなると、居住用賃貸建物の購入のために支払った消費税は、受け取った消費税と相殺することができません。

このようなわけで、「居住用賃貸建物」を購入しても、消費税還付は原理上発生し得なくなったわけですね。

実際のところ、従前からレジデンス物件などの消費税還付は実際にはできない立て付けではあったのですが、ここを金地金の売買などにより意図的に課税売上を作ることで容易に突破できてしまっていました。

このような状況にメスを入れるべく、そもそも制度の対象外とする焼き畑のような改正が行われたということになります。

小手先の増改築ではどうにもならなくなったので、建物自体を解体してしまったかのようなインパクトのある改正です。

もう「居住用賃貸建物」の購入では消費税還付は発生しえません。

では、どのような建物が「居住用賃貸建物」に該当するのかが非常に重要なポイントになってきますね。

居住用賃貸建物とは?

では、居住用賃貸建物の定義を見てみましょう。

先程引用しましたが、法律上はこう書いてあります。

事業者が国内において行う別表第一第十三号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含む。以下この項において同じ。)以外の建物(第十二条の四第一項に規定する高額特定資産又は同条第二項に規定する調整対象自己建設高額資産に該当するものに限る。第三十五条の二において「居住用賃貸建物」という。)

ぱっと読んだだけでは何が何やらわかりませんね。

要するに、

  • 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物(設備含む)
  • 高額特定資産または調整対象自己建設高額資産に該当しないもの

ということになります。

では、高額特定資産とは何でしょうか?

消費税法第12条の4

高額特定資産とは、棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、その価額が高額なものとして政令で定めるものをいう。

消費税法施行令第25条の5

法第十二条の四第一項に規定する政令で定めるものは、次の各号に掲げる棚卸資産及び調整対象固定資産(以下この項において「対象資産」という。)の区分に応じ当該各号に定める金額が千万円以上のものとする。

一 ~ 二 省略

つまり、高額特定資産とはざっくり言うと、

税抜価格が1千万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産

だということになります。

ん?調整対象固定資産って何?

定義を知るために別の用語の定義を知らなければならずますますわかりにくいですね。

調整対象固定資産の定義を確認してみましょう。

消費税法第2条第16項

調整対象固定資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産でその価額が少額でないものとして政令で定めるものをいう。

消費税法施行令第5条

法第二条第一項第十六号に規定する政令で定める資産は、棚卸資産以外の資産で次に掲げるもののうち、当該資産に係る法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の百十分の百に相当する金額、当該資産に係る同項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる当該資産の課税標準である金額が、一の取引の単位(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)につき百万円以上のものとする。

一 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
二 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
三 機械及び装置
四 ~ 六 省略
七 工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
八 ~ 十一 省略

消費税法基本通達12-2-5

令第5条各号《調整対象固定資産の範囲》に規定する資産に係る資本的支出は同条に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に含まれるのであるから留意する。

つまり、調整対象固定資産とは、建物や設備といった固定資産(資本的支出を含む)で、税抜価格が100万円以上のものということです。

以上をまとめると、「居住用賃貸建物」の定義は以下のようになるでしょう。

  • 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物(設備含む)
  • 税抜金額が1,000万円以上の棚卸資産または固定資産(資本的支出を含む)

だらだらと高額特定資産に関する条文は長かったですが、シンプルですね。

ただ、実は、この条文のキモは、高額特定資産の定義ではありません。

「住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物以外の建物」って何?というところですね。

この文章の裏を返すと、「住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物」のみが居住用賃貸建物に該当しないということになります。

居住用賃貸建物に該当しない場合に、初めて仕入税額控除の対象になるわけですから、この「住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物」に該当するか否かは非常に重要です。

住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物とは?

それでは、「住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物」とは何なのか確認してみましょう。

消費税法基本通達11-7-1

居住用賃貸建物は、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含む。以下この節において同じ。)以外の建物であることが要件となるが、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」とは建物の構造及び設備の状況その他の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいい、例えば、次に掲げるようなものがこれに該当する。(令2課消2-9により追加)

(1) 建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など、建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物

(2) 旅館又はホテルなど、旅館業法第2条第1項《定義》に規定する旅館業に係る施設の貸付けに供することが明らかな建物

(3) 棚卸資産として取得した建物であって、所有している間、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかなもの

今までは、「どのような用途に今使っているのか」を基本的には見ていました。

しかし、今後は、建物が構造として居住用に使えるのかどうか、を見るということです。

要するに、このような「住宅の貸付の用に供しないことが明らか」だと証明できる物件でないと、基本的に居住用賃貸建物に該当してしまうことになります。

これはかなりキツい定義であることがおわかりでしょうか?

要するに、グレーゾーンが存在しないわけですね。

建物の構造上、居住用として使用できる可能性が少しでもあれば、今居住用として使っていようがいまいが、それは居住用賃貸建物に該当してしまうというわけです。

建物は原則として居住用賃貸建物であり、居住用に使用できないことが明らかなものは特別に居住用賃貸建物から除かれる、と言い換えてもいいかもしれません。

居住用賃貸建物ではないと言うなら、居住用賃貸に明らかに使えない、と証明する必要があるのですね。

居住用賃貸建物に該当する具体例

上記定義に照らして、以下のようなケースを検討してみましょう。

1. 各部屋にキッチン、バス、トイレなど居住用設備が設置されているが、当初は事務所として賃貸しており、今後も事務所用として賃貸することを予定している物件

これは、居住用賃貸建物に該当します。

このような物件は、従来消費税還付の対象だったのですが、今は消費税還付の対象にはならないのです。

居住用賃貸建物に該当しないと言うためには、

建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など、建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」である必要があります。

建物の全体が、構造上居住用に使えないといえる必要があります。

今は事務所使用していたとしても、設備の状況から見て居住用にも使える物件は、居住用賃貸建物に該当するということになります。

2. 今民泊に使用している物件

現状、民泊使用をしている物件はどうでしょうか?

民泊物件は、従来消費税還付を受けることができました。

しかし、民泊物件は居住用賃貸建物に該当するのです。

民泊とは、住宅としての施設を利用して「住宅宿泊事業」を営むものですね。

そういった点を考えると、民泊用の物件は構造上は居住用賃貸にも使用可能なはずです。

ですから、民泊物件も基本的には居住用賃貸建物に該当してしまうわけですね。

3. 転売目的で購入する物件

転売目的で購入したレジデンスマンションはどうでしょうか?

これも、居住用賃貸建物に該当します。

上でも記載しましたが、物件の購入目的や現況の使用状況は関係有りません。

居住用賃貸にも使える可能性があるのかどうかだけです。

居住用に使える物件を購入したなら、転売目的だろうがなんだろうが居住用賃貸建物に該当するのです。

4. 1階がテナントで2階から上がレジデンスの物件

いわゆる下駄履き物件ですね。

1階部分がテナント使用となっており、コンビニなどが入っている一方、2階から上には居住用の部屋があるような構造です。

これも、基本的には居住用賃貸建物に該当するわけです。

なぜなら、前述のとおり、

「建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など、建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」

でないと居住用賃貸建物に該当しないからです。

建物の一部に居住用に使える部屋があったなら、それは居住用賃貸建物なのです。

ただ、建物の中で明らかに構造が別れている、つまり、居住用の部屋をテナント使用しているのではなく、テナント用に設計された区画が存在する場合には、以下のような救済策が設けられています。

消費税法施行令第50条の2第1項

法別表第一第十三号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分がある居住用賃貸建物について同項の規定の適用を受けることとなる事業者が、当該居住用賃貸建物をその構造及び設備の状況その他の状況により当該部分とそれ以外の部分(以下この項及び同条第一項において「居住用賃貸部分」という。)とに合理的に区分しているときは、当該居住用賃貸部分に係る課税仕入れ等の税額についてのみ、法第三十条第十項の規定を適用する

消費税法基本通達11-7-3

令第50条の2第1項《仕入れに係る消費税額の控除の対象外となる居住用賃貸建物の範囲》に規定する「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分がある居住用賃貸建物」とは、例えば、建物の一部が店舗用の構造等となっている居住用賃貸建物をいい、同項に規定する「合理的に区分している」とは、使用面積割合や使用面積に対する建設原価の割合など、その建物の実態に応じた合理的な基準により区分していることをいう

明らかに居住用で無い部分と、それ以外の部分を合理的に区分しているときは、明らかに居住用でない部分、つまり1階のテナント部分に対応する消費税は、今まで通り仕入れ税額控除の対象となるわけです。

この合理的に区分する方法は、面積比率や建設原価比率が例示されていますね。

基本的には、建物取得価格の総額を、使用面積比率で按分することになるのでしょう。

5. 区分計算の結果、居住部分が1,000万円以下となった場合

上記の合理的区分の結果、居住用賃貸部分が1,000万円未満になったケースはどうでしょうか?

この場合、居住用賃貸部分も1,000万円未満だから居住用賃貸建物に該当せず、仕入税額控除の対象にできるのでしょうか?

これは、できないというのが結論です。

居住用賃貸建物は建物全体で判断します。

まずその建物に居住賃貸に使用可能な部分がある場合は、その建物全体が居住用賃貸建物と判断され、その上で、テナント部分など、居住賃貸用に明らかに使えない部分がある場合は、そこを区分して仕入れ税額控除を適用しても良い、ということですね。

ですから、かりにテナントを区分した残りが1,000万円未満だとしても、その残った部分は居住用賃貸建物に該当するので、仕入れ税額控除の対象とはならないわけです。

6. 社宅はどうなる?

不動産投資家ではあまり無いケースでしょうが、自社の社宅や従業員寮として物件を取得した場合はどうなるのでしょうか?

実は、社宅費として賃料を従業員から徴収する場合と徴収しない場合で判断が別れます。

①社宅費を徴収する場合

社宅費を徴収する場合は、会社として物件を賃貸していることと何ら代わり有りませんから、社宅・寮に使う物件は居住用賃貸建物になるわけです。

②社宅費を徴収しない場合

実は、社宅費や寮費を徴収しない場合、居住用賃貸建物に該当しません。

え?何で??という感じでは有りますが、これは国税庁の質疑応答事例に明示されていますから、間違いないでしょう。

国税庁質疑応答事例 社宅に係る仕入税額控除

1 自己において取得した社宅や従業員寮の取得費

使用料を徴収する社宅や従業員寮は、居住用賃貸建物に該当しますので、事業者が、国内において行う社宅や従業員寮の取得に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象となりません。

なお、従業員から使用料を徴収せず、無償で貸し付けることがその取得の時点で客観的に明らかな社宅や従業員寮は居住用賃貸建物に該当しないことから、その取得費は仕入税額控除の対象となります。この場合の個別対応方式による課税仕入れ等の区分は、原則として課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当します。

おそらく、社宅・寮規定がきっちりと整備されており、そこで無償で従業員に貸し付ける旨が明示されているといった状況があり、かつ過去から社宅・寮は無償で貸付を行ってきていて、今回取得した物件も実際に社宅・寮として無償で貸しているようなケースはこれに該当するでしょう。

実は、無償で貸し付ける社宅は、「事業者が国内において行う別表第一第十三号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」に確かに0該当するので、居住用賃貸建物には該当しないのです。

このあたりの法律解釈はあまりに複雑なので、ここではご紹介しませんが、そんなのもあるんだ、程度に見ておいてください。

ただ、この場合は、社宅・寮使用料相当額が、従業員や役員の側で給与所得課税されてしまいますので、注意が必要ですね。

個人的には、この無償で貸し付ける社宅や寮を居住用賃貸建物としないという取り扱いは、解釈として明らかでない部分が残っており、ちょっと突出している印象があります。

不動産賃貸業をやっていない一般事業会社に今回の改正の影響が強く出ないようにするための配慮なのかな?と思ったりします。

消費税が非課税となる、「住宅の貸付け」の定義の変更

続いて、②の住宅の貸付の定義の変更を見ていきましょう。

まずは、改正前の住宅の貸付の定義を見てみます。

消費税法別表1 13 改正前

住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

まあそうだよね、という内容でしかありません。

しかし、実は抜け穴があったのです。

当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合に限るものとし

という部分ですね。

契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合に限るということは、契約書で用途を明らかにしていなかった場合はどうなるのか?

ということですね。

実は、契約書で用途を明らかにしていない場合は、消費税法上、居住用としては判定されないのですね。

消費税法の条文に「契約に人の居住の用に供することが明らかにされている場合に限る」と明示されているので、そうなります。

この点を逆手に取り、物件にサブリース契約を導入し、そのサブリース契約書に用途を明示しないことによって、受け取る家賃を非課税の住居賃料から、課税される用途不明の賃料に変換してしまう事ができたのです。

その結果、居住用物件についても、消費税還付を行うことができていたのですね。

それでは、これがどのように改正されたのでしょうか?

消費税法別表1 13 改正後

住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む)に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

消費税法基本通達6-13-11

法別表第一第13号《住宅の貸付け》に規定する「当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合」とは、住宅の貸付けに係る契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付けに係る賃借人や住宅の状況その他の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合をいうのであるから、例えば、住宅を賃貸する場合において、次に掲げるような場合が該当する。)

(1) 住宅の賃借人が個人であって、当該住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合

(2) 住宅の賃借人が当該住宅を第三者に転貸している場合であって、当該賃借人と入居者である転借人との間の契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合

(3) 住宅の賃借人が当該住宅を第三者に転貸している場合であって、当該賃借人と入居者である転借人との間の契約において貸付けに係る用途が明らかにされていないが、当該転借人が個人であって、当該住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合

文章としてはますます分かりにくくなりましたが、要するに、用途が契約書に明示されていなくても、居住用賃貸に出されていることが客観的に明らかな場合は、非課税とするという取り扱いになったということです。

これによって、サブリース契約などにより、あえて用途を不明にすることで消費税還付を受けるという道を封じたのですね。

改正はデメリットばかりではない

このように、居住用にも使える物件の消費税還付は基本的に不可能になりました。

しかし、居住用の部屋を事務所として貸し出すことは別に珍しくありませんし、民泊物件もあります。

住宅の間取りや設備であったとしても、消費税の非課税となる住居家賃が発生する物件ばかりではありません。

そういった物件は、一方的に不利益を被るのかと言うと、そうではありません。

また、物件を売却した場合はどうでしょうか?

建物を売却すると消費税の納税が必要になるわけですが、その売却する物件を購入時に仕入れ税額控除できていないと、事業者は消費税の納税のみ一方的に負担することになります。

こういった自体を回避するために、一定の調整計算の規定が設けられています。

その調整計算をつぶさに見ると、今回の改正はデメリットばかりではないとも感じます。

こういった部分は、別の記事で解説したいと思います。

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