区分マンション投資の信じがたいセールストーク。どうやっても儲からない

最近、一棟物物件に対する融資が伸びなくなってきており、
その結果、ロットの比較的小さい区分マンションがよく売れているようです。

しかし、個人的には現状の区分マンション投資にはかなり懐疑的です。

税理士にも営業電話 投資用区分マンション業者との業務提携?

先日、事務所に電話があり、どうも投資用区分マンション業者のようでした。

税理士のような自営業は区分マンションの提携ローンが厳しいので、なぜ
電話してきたのか不思議でしたが、話を聞いてみると、どうも税理士と提携して、
顧客に区分マンションを販売したいとのこと。

完全なブツモト業者なので、未公開の割安区分マンションをご紹介できます!
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まぁ、区分マンションだろうがなんだろうが、安いものを購入できれば儲かるので、
どんな条件で売っているのか聞いてみました。

「表面利回り4%弱の高利回り中古ワンルームを、金利2%の低金利でご提供
できます!」
「毎月1万円程度の現金収入を確保できます!」
「弊社で購入された方の満足度は非常に高いです」

思わず失笑してしまいました。

天地がひっくり返りでもしない限り儲からないですよねどう考えても。

表面利回り4%でいったいどうやって儲けるつもりか?

本気で理解できないのですが、表面利回り4%の物件を、金利2%で買って、
いったいどうしたら儲かるのでしょうか?

キャッシュフローがどう考えても回らない

毎月のキャッシュフローが1万円のプラスといっても、これは空室による機会損失も、
入居者退去時の原状回復費も、経年による家賃下落も織り込まれていません。
さらに致命的なことに、所得税の納税負担が織り込まれていません。

20平米程度のワンルーム出会っても、退去時には10万円から20万円程度の
原状回復費はかかるものです。

それだけで、1年分以上の家賃に匹敵するキャッシュフローが失われることになります。

さらに、区分の宿命として、空室期間に一切家賃収入が生じません。
このため、退去後空室が2ヶ月程度あっただけでも、原状回復費と合わせて
キャッシュフローが2年分近く失われます。

都心のワンルームは入居者の入れかわりがどうしても頻繁ですが、3年に
一度あったとすると、そのうち1~2年分は原状回復のみで消えていきます。

さらに、元金返済分のキャッシュアウトには所得税が課されますので、
どう立ち回っても赤字にしかなりません。

将来的な資産価値に疑問

このあたり、キャッシュフローがどう考えても厳しいという点は販売業者
も理解しているようで、最近は違うセールストークを展開しています。

それが、

将来の資産になるのだから、今キャッシュアウトがあっても貯金のようなものだ
30年後のローン完済後には銀行の支払いが無く総取りでき、老後資金にちょうど良い

というものです。確かに一見正論に見えますが、本当なのでしょうか?

これまでの記事で何度か解説しましたが、元金返済によるキャッシュアウトは、
債務が減少し純資産が改善するという点で、単純な支出とは言えません。
純資産が改善するという意味で貯金になぞらえるのも有り得る話です。

しかし、そこには大前提があります。

それは、

購入した物件価格が大きく値下がりしない

という前提です。

元金返済以上に物件価格が値下がりしてしまえば、元金返済は実は
貯金でも純資産でもなく、単なる損だったということになります。

はたして、本当に物件価格はさがらないのでしょうか?

私はそうは思いません。
次に記載する、大規模修繕の問題があるためです。

修繕積立金の増額と大規模修繕という隠れた地雷

特に新築の投資用区分マンションにありがちな話ですが、
修繕積立金の金額が最小限度に引き下げられています。

その上で、見た目の利回りを改善した上で投資家に売却するというわけです。

もちろん、本当に大規模修繕を行うためには、その修繕積立金では全く
足りません。

ではどうするのでしょうか?

  • 修繕積立金が足りていない現状を無視して、成り行きに任せる
  • 販売して数年で、修繕積立金を一気に引き上げる

という手法が取られます。いずれにしても、オーナーにとっては茨の道です。

修繕積立金を引き上げずにいると、いづれ迎える大規模修繕に対応できません。
このため、その際に今までの積立不足額を一気に支払う必要が生じます。
また、この積立不足額の一括徴収すら実現できなければ、大規模修繕ができず、
物件はどんどん老朽化していきます。
この結果、資産価値は加速度的に低下していくことになります、

販売後数年で修繕積立金を一気に引き上げるという場合は、購入したオーナー
は事前に全く知らされていないことなので、収支計画が大幅に狂うことになります。

また、売却する場合の利回りも低下することになるので、損切りも厳しい局面となります。

また、オーナーがほとんど投資家(外国人も多い)である投資用マンションは、
管理組合の意思決定が難しく、このようにオーナーに痛みを強いる決定を行えない
傾向にあります。

この結果、多くの区分マンションは修繕が適切になされないまま老朽化
していかざるを得ません。

果たして、本当に将来資産価値が残るといえるのでしょうか?

業者間で流通するオーナー情報

実は、区分マンションを購入したオーナーの情報は、販売業者間で
流通しています。

販売業者も多くのオーナーが赤字であることは理解しているので、
どこかのタイミングで声をかけて売却させようとするわけです。

流通する名簿をもとに、別の販売会社がアプローチをしてきます。

このとき、オーナーは赤字で継続保有が難しいので、買い叩かれる
ことになります。

購入時も売却時も販売業者に利益を持っていかれるシステムが
見事に可動しているというわけですね。

見事なまでに完成された富の収奪システムが存在しますので、
そのような中で利益を上げるなど最初から不可能な話です。

それでも顧客満足度が高いと言い張れる理由

それでも、販売業者は自社の顧客満足度が高いと言い張ります。

それが完全な嘘でないとしたら、そこには以下のような理由が考えられます。

ここ数年の価格高騰で本当に儲かった

ここ数年の不動産の異様な価格高騰のなかで、購入した投資用区分マンションを
高値で転売できた方もいるとおもいます。

というか、このような販売業者から購入した投資用区分マンションが唯一
儲かる場面というのが、相場の高騰による転売益でしょう。

しかし、いかんせん投資用商品というのは上限の利回りがあります。

ここからさらに、表面利回りが3%になってくるような価格上昇があるとは
到底思えません。

保有オーナーが本当に気づいていない

手残りが不思議と少ないが、特に気にしていない人も多いのかもしれません。

しかし、これから気づくタイミングが遅かれ早かれやってくるでしょう。

実需向け売却が可能なら、儲かるかも

私が区分マンションに対する投資で、儲かる可能性があると感じるのは、
投資用として購入した区分マンションを、空室になったタイミングで
住宅用として実需向けに売却することです。

40㎡程度ある1LDKなどは、自宅としての需要があります。

一方で、投資用マンションは利回り換算でしか購入されないのですが、
その価格のほうが実需向け価格より低いことが多いのです。

その場合、投資用として入居者がいる状態で購入し、数年間保有した上で、
入居者が退去したタイミングでリフォームをかけ、住宅用として売りに出す。

これは、普通の不動産会社も行っている投資法ですし、購入価格さえ間違わなければ、
非常に手堅い投資になるでしょう。

逆を言えば、20㎡程度の区分ワンルームマンション投資は、現在の市況においては、
余程安く購入して転売でもしない限り、儲からないでしょう。

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