京都アニメーションへの義援金はふるさと納税になります

京都アニメーションに対する放火事件からもうある程度時間が立ちました。

アニメファンにとって、京都アニメーションと言う会社は特別な存在です。
多くの方が、義援金の拠出をされたようですね。

さて、一方、こういった民間企業への寄付というものは、通常、税金上の
優遇措置を受けることができません。

しかし、今回は京都アニメーションへの寄付は、ふるさと納税の対象
となったようです。

大変素晴らしいことですが、イマイチ広まっていないようですので、
私の方でも記事にしてみました。

なお、今回は義援金を拠出した個人が、個人の所得税・住民税の軽減を
受ける方法に焦点を当てています。
法人からの義援金も多かったようですが、この記事では取り扱っていません。

寄付金の税金上の優遇措置

所得税・住民税の計算上、寄付金の取り扱いは以下のような種類により
取り扱いがことなります。

所得税上の優遇措置

個人が寄付金を支払った場合、以下のような団体に対する寄付であれば、
所得税の計算上、寄附金額を税額控除することができます。
つまり、寄附金額×所得税率分が所得税の節税になります。

  1. 国や地方公共団体
  2. 公益を目的とする事業を行う法人や団体
  3. 独立行政法人や公益社団法人等
  4. 特定公益信託
  5. 政党や政治資金団体等
  6. NPO法に規定する認定NPO法人

つまり、公益性の高い団体に対して寄付金を支払った場合は、
ご褒美として所得税の優遇をしましょうというものです。

通常は、寄付をすれば、寄附金控除の対象になる旨記載された
領収書が送られてくるので、自分の寄付が対象かどうかは寄付金領収書
を見ればわかります。

住民税上の優遇措置(ふるさと納税)

ふるさと納税は、近年悪い意味でも話題になりましたので、多くの方が
ご存知でしょう。

寄付金を、都道府県又は市区町村に対して行った場合は、上記の所得税上の
寄付金控除に加えて、住民税の税額控除を受けることができます。

詳細な計算方法は以下の記事にて解説しているのでご参照ください。

この住民税額控除の結果、地方自治体に寄付を行った場合は、限度額の
範囲内であれば、2,000円のみの自己負担で寄付が可能になるというわけです。

京都アニメーションへの寄付金はどう考えるか?

さて、京都アニメーションはいち民間企業に過ぎませんので、寄付を行っても
本来は上記のような所得税や住民税の優遇対象になりません。

記載したとおり、公益性の高い団体や地方自治体に対する寄付のみが優遇の
対象になっているからなのです。

しかし、今回は京都アニメーションに対する寄付金は「ふるさと納税」に
該当し、限度額の範囲内であれば、2,000円を除いて自己負担なしで寄付できます。

これは、現状京都アニメーションの法人口座に入金されている寄付金を、9月20日
をもって全額京都府の口座に移転し、その全額を事件の被害者やご遺族に「京都府が」
分配することになったことによるもののようです。
(より厳密にいうと、京都府の義援金配分委員会がとりまとめます)

つまり、京都府が被害者救済の主体となることにより、京都アニメーションに行われた
寄付金は、実質的に京都府に対する寄付となったというわけです。

結果、京都アニメーションに対する寄付は京都府への寄付と同一ですので、
ふるさと納税の対象となったというわけです。

なお、被害者の方が京都府から受け取る義援金は、所得税法施行令第30条3項の規定
により所得税は課されません。

京都アニメーションへの寄付がふるさと納税になる手続き

京都府等へ直接寄付をする場合

9月9日以降に、以下の口座を使えば直接京都府等の義援金分配委員会に直接
寄付をすることが可能です。

詳細は以下のページでもご確認ください。

これらの口座に直接振込を行った場合は、振込時の振込明細票と、募集要項を
確定申告書に添付すれば、ふるさと納税の適用を受けられます。

募集要項は以下のページに掲載されています。

 

しかし、ふるさと納税でよく利用されるワンストップ特例の適用は受けられそうにないので、
必ず確定申告を行う必要があります。

なお、ふるさと納税を行う場合の確定申告書の書き方は下記ページを
ご参照ください。

すでに京都アニメーションの口座に振り込んだ場合

すでに京都アニメーションが開設していた義援金受け入れ口座に振込を行って
いた方も多いでしょう。

具体的に言うと、下記の口座ですね。

その場合も、次の手続きをすることにより、義援金をふるさと納税の対象と
することができます。

  1. 上記口座に振り込んだことがわかる資料(銀行の利用明細書など)
  2. 住所や氏名を確認できる資料(運転免許書の写しなど)
  3. 申請書(現時点ではフォーマット等詳細不明)

今後、より詳しい情報が京都アニメーションのホームページで公表される
ようですから、すでに上記口座に寄付をした方は定期的にチェック
したほうが良いでしょう。

京都アニメーションに以上の書類を提出することにより、京都府から寄付金の
受領証を発行してもらえるようです。

この受領証を確定申告書に添付して提出することにより、ふるさと納税の
対象となるようですね。

ただ、この申請は、寄付をした個人から京都アニメーションに対して行う
ようです。
京都アニメーション側の事務負担がとんでもないことになりそうなのが
ちょっと心配ですね。。。

募金箱やクラウドファンディング経由で寄付した場合

ちなみに、京都アニメーションへの義援金は、様々な経路で行われました。

各地の募金箱を用いた募金活動や、クラウドファンディングでも
多くの義援金が集まったようです。

しかし、残念ですが、これらの方法で支払った義援金はふるさと納税の対象
にはならないようです。

募金箱への寄付は支払いを証明することができないので、今でも
どんな内容の寄付でも税金面の優遇は受けられないのです。

もちろん、本来寄付は見返りを求めて行うものではありません。

事件後の最初期に募金箱やクラウドファンディングに応募された方々の
心意気は素晴らしいものです。

おそらく、これらの寄付を優遇の対象とできない京都府や京アニの忸怩たる
思いは察するに余りあります。

しかしながら、こればかりは、現行の制度上どうすることもできません。
どうしようにもできない部分ですので、仕方ありません。

もちろん返礼品はありません

ふるさと納税と言われると、返礼品を思い浮かべる方も多いでしょうが、
まあ当然ですが、返礼品はありません。

あくまで、寄付した金額が戻ってくるだけです。

京アニだけ不公平?迅速な税制対応は見事だった!

ネットの反応を見ていると、この京都アニメーションに対する義援金の
寄付金控除適用について、不公平だというような意見を見ます。

たしかに、今まで民間企業に対する寄付金というものは、寄附金控除の対象
になりませんでしたので、税金の優遇はありませんでした。

そういった面で、なぜ京アニだけ優遇されるのか?
という意見はわからないでもありません。

しかし、考えていただきたいのですが、税制というものは不磨の大典ではありません。

その時代の状況やニーズに合わせ、柔軟に変更していくべきものです。

もちろん、税法の改正は国会や自治体議会の承認が必要ですから、
その変更は柔軟性に欠け、ときに時代遅れですらあります。

しかし、いままで民間企業に対し、これほど多くの人、しかも利害関係の無い個人
がこぞって寄付を行ったという事案は、日本にはありませんでした。

そういった点で、利益追求団体である民間企業に、個人が純粋な、見返りを
求めない寄付の意思で資金を投じるという現象は非常に新しいものです。

いままでの税制は、そういった事態を想定していません。

このような新しい現象に対し、国や京都府が従来の法制に縛られず、しかし
現状の法制に適合したかたちで機動的に税制面での手当を行えたというのは、
称賛されても非難されることではありません。

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