節税したい!の前に知っておきたい2つのこと

不動産投資家の方と話をしていると、かならず、どのように節税するかという話になります。

まあ、当然といえば当然で、圧縮できる税金は圧縮したいですよね。

私も税金を払うのは本当にイヤなので、お気持ちはよくわかります笑

ただ、実際に節税手法を導入していく場合、その前に2点検討が必要なポイントがあります。

それは、

  1. 今後物件を増やしたいのか
  2. 節税をするだけのキャッシュフローがあるのか

という2点なのですね。

この2点の検討をせずに節税に取り組んでしまい、後悔している人は意外と多いものです。

なぜ?税金を払わないで済むならそれがいいじゃない!

というのはもっともな話です。

もちろん、毎年利益とキャッシュが潤沢に発生する、事業運営を行っている方はそうでしょう。

ただ、実は不動産投資家はそうではないケースがほとんどなのです。このあたりの検討をせずに節税をすると、

  • いくら実績を積んでも銀行からの評価がやたらと低く、扱いも雑
  • 税金は減ったがなぜかお金が減る

というような事態が生じます。

実際、多くの方で生じています。

これを回避するため、事前の検討が欠かせません。

一つづつ見ていきましょう。

 

1.物件を増やしたい場合に節税すべきか

結論としては、物件を増やしたいなら、節税は慎重にするべきと考えます。

節税でお金が残るから今後の物件取得に逆に有利になるはずでは?

と思われるかもしれません。

ただ、実はそう単純ではないのです。

物件を今後も増やしていきたいと考えている場合、物件を現金で買わないのであれば、銀行から融資を受けていくことが必要です。

ここで重要なポイントは銀行の評価基準です。

銀行から自分が評価されないと融資をしてもらえません。

特に、債務償還年数が重要となります。

債務償還年数は、以下の算式で計算します。

長期借入金÷(経常利益✕0.7+減価償却費)

若干正確性には欠けますが、このように理解いただいて一旦は問題ありません。

この計算式によって、債務償還年数は〇〇年ですね、というような見方をします。

例えば、長期借入金100、税後利益10、減価償却費10の場合を考えてみると、

100÷(10+10)=5

ですから、債務償還年数は5年となります。

この債務償還年数は、短ければ短いほど評価が高いです。

銀行は、この債務償還年数が10年を超えると、借りすぎの判断をすることが多いです。

ただ、不動産賃貸業やホテル業、製鉄業、インフラ業など、多額の設備投資を要する産業は、ここが若干伸びます。

おそらく、20年を切ってくるくらいであれば、ある程度の金融機関とお付き合いができるでしょう。

 

では、債務償還年数を短くする上で、何が重要なのか?

それは、利益です。

もう一度計算式を見てみましょう。

 

長期借入金÷(経常利益✕0.7+減価償却費)

 

変数が3つありますが、長期借入金と減価償却費は通常固定値です。

この中で、実質的に変動可能なのは、経常利益だけなのです。

ここで、節税とはそもそもどのような行為か、考えてみましょう。

節税とは、利益の圧縮にほかなりません。

税金とは通常利益にかかりますから、利益を意図的に小さくすることが節税なのです。

そうすると、債務償還年数は当然長くなってしまいます。

債務償還年数が長くなると、銀行からの融資は難しくなります。

もちろん、現時点で不動産賃貸業でありながら、15年や10年などの債務償還年数を達成できていれば、節税にかなり取り組んでも問題ありません。

ただ、多くの不動産投資家はそうではありません。

フルローンで30年融資を受けていたりすると、節税をする前で債務償還年数が25年を超えていたりします。

その状況で節税をし、利益を圧縮するとどうなるか。

債務償還年数が30年を超えても不思議ではありません。

そうなると、通常融資を受けられないのです。

多くの方が、最初はアパートローンを使うでしょう。

アパートローンは、多くの場合「給与の何倍まで」というような、一種住宅ローンのような計算をします。

このようなローンは、債務償還年数などあまり気にしません。

また、彼ら自身、顧客の利益を基準に融資をしないので、顧客が節税で赤字になっていようが特に気にしません。

ただ、給与に上限があるので、必ず一定の上限に達し、それ以降は借入できなくなります。

それが、多くの方が物件を買えなくなる理由です。

それ以降は、債務償還年数を中心とする、通常の融資基準で融資を受けるしかありません。

アパートローンという特殊な融資商品の外に出ると、そこは利益で会社を評価する世界なのです。

節税によりこれまで利益を圧縮した決算書を見せられた銀行員が何というか?

もうおわかりでしょう。

節税が利益を圧縮するという行為である以上、実は銀行融資と密接な関係を持つのです。

その結果、節税は自分の銀行評価を悪化させ、次に物件を購入したいと思っても銀行からの融資を受けられない、ということになりかねません。

このことは、是非理解しておきたいですね。

 

2.節税できるだけのキャッシュフローがあるか?

なぜ、節税するためにキャッシュフローが必要なのでしょうか?

それは、単純な話で、節税はお金を払うものだからです。

生命保険を考えてみましょう。

生命保険料を支払い、これが経費になることで、節税という目的が達成されます。

つまり、会社からお金は出ていくのです。

保険料100円を支払いうと、経費が100円増え、税金が25円減りますが、75円はお金が手元からなくなります。

では、役員社宅はどうでしょうか?

これも、自宅の賃貸契約を法人名義で行い、法人から家賃を支払うことになります。

これも、法人からお金が出ていきます。

法人からお金が出ていくのであれば、そのお金をどのように準備するのでしょうか?

支払うお金が法人の口座に入っていないと、そもそも支払うことができません。

不動産保有法人の口座残高が増える方法は、2つしかありません。

物件からのキャッシュフローか、自分個人の預金を振り込むかです。

例えば、物件からのキャッシュフローが毎月、税引き後で10しかないのに、20の生命保険の支払いがあるなら、足りない10を自分の個人口座から法人口座に振り込むしかありません。

そうなると、どうなるでしょうか?

代表者からの借入金が、10増えることになるのです。

 

このようなことが毎月毎月続くとどうなるか、もうおわかりでしょう。

毎月毎月、個人から法人に資金を移動させ続ける必要があります。

そうなると必然的に、どんどん法人の負債(役員借入金)が膨らんでいくことになります。

役員借入金は、全額が役員の相続財産になりますから、いずれ清算が必要になります。

ただ、別に法人にお金があるわけでは有りません。

お金は保険会社に払ってしまっているわけです。

であれば、この役員からの借入金を精算するには、物件を売ったり保険を解約したりして資金を捻出する他有りませんね。

節税のためにお金を払い、そのお金を捻出するために物件を売るのは実に本末転倒な話ですし、保険を解約したら税金が発生してしまいます。

この段階で、多くの方が、そもそも何故こんなことをしたんだっけ?

という疑問を抱かれるのですね。

これは、節税のためにはお金を払わなければならない、という点を見逃していたということでしょう。

節税が資金流出を伴うものなのであれば、それ以上に「稼がなければ」法人のお金は減ります。

このため、物件から受けとるキャッシュフロー以上に節税でお金を払うと、個人側からお金を借りるしかありません。

多くの方が、お金を支払う節税が過大なせいで、資金繰りに困っています。

ですので、節税をするのであっても、物件からのキャッシュフローで無理なく払うことができる節税なのかどうか?

を必ず確認しなければならないのです。

 

3.まとめ

節税ということばは実に甘美なものです。

それはそうで、税金を払いたくて払っている人なんていないでしょう。

税金を払わずに済むのであれば、それにこしたことはありません。

しかしながら、節税をすることにより税金を払わずに済んだ!では済まないことも多いのです。

とりわけ、これから不動産投資を始め、資産規模を大きくしていきたい!という目標がある方が、節税に熱中してしまうのは、果たして目的に沿った行為なのか疑問が残ります。

皆様の状況に応じた適切な判断をしていきたいですね。

© 2021 和田晃輔税理士事務所