不動産投資における、建物附属設備の計上方法と留意点

不動産を購入した場合には、建物附属設備が通常はついてきます。

この部分は、建物本体よりも短い法定耐用年数が適用されますので、
うまく使えばタックスコントロールに有効です。

建物附属設備とは?

建物附属設備とは、不動産投資においては、物件の電気設備、給排水設備、冷暖房機
やボイラー、あとはエレベータなどが該当します。

この附属設備の金額が何故重要になってくるかというと、附属設備には
通常建物本体よりも短い法定耐用年数(おおむね15年)が適用されるため、
金額を大きく取ることができれば、すべて建物とする場合に比べて減価償却費が
大きくなるのです。

減価償却費が大きくなれば、納税額が減ることになりますので、
毎年の資金繰りは改善することになります。

そういった点があり、建物附属設備はできるだけ大きな金額で計上しよう
というのが、ある種一般的になっています。

ただ、通常売買契約書には土地建物の金額を記載することはあっても、
建物付属設備の金額が記載されていることは稀です。

どのように附属設備の金額を出せばよいのでしょうか?

新築物件の建物附属設備

新築の場合は、正直あまり論点はありません。

この場合は、新築時の発注書などに設備の一覧のその金額
が記載されているでしょう。
実際に附属設備に対して支払った金額が判別可能です。

それに基づいて設備を算出することになります。

この場合に問題が生じるとすれば、本来建物や構築物とすべきものを
附属設備に誤計上することでしょうか?

また、税理士がすべて建物に計上してしまったと言うような
誤りもよく聞きます。

新築の場合、附属設備をきちんと取らないと減価償却費が小さく
なりすぎるので、きちんと計上すべきです。
木造ですら22年で償却ですので、建物単独では結構きついです。

中古物件の建物附属設備

中古の物件を購入した場合は、売買金額のうちどれだけが建物附属設備
なのかは通常明らかではありません。

築が古くなると、建設時の資料も失われ、どのような附属設備が
使われているのかすらわからなくなります。

このような場合、どのように金額を附属設備に按分するのでしょうか?

判例における考え方

建物付属設備をどのように金額にするか揉めたケースはいくつかあります。

かつては建物附属設備は定率法により償却できたため、個人で物件を保有
したりすると、大きな節税効果が期待できたためです。

実際に税務署と揉めたときは、どのように建物附属設備の金額を
算出するのでしょうか?

① 新築時の工事請負書などから新築時の価格を調べ、それに経年劣化を
  加味した金額で按分する方法

これは、新築時の工事請負契約書などから、工事全体の金額に対する、
実際に設備に要した金額の割合を求めて、その割合で中古の建物を
建物と建物附属設備に按分する方法です。

また、この按分割合はあくまで工事請負契約書のものですので、新築時の
割合です。これを中古にするため、経年劣化を織り込んで最終的な割合
を計算します。

② 再建築費評点数算出表を用いる方法

新築物件の建物の固定資産税を計算する資料に、再建築費評点数算出表
というものがあります。

建物と建物附属設備の両方について、再建築費評点数算出表に基づく
評価額を計算し、これに経年劣化を織り込んで建物と建物附属設備の
割合を算出するという方法です。

現状の一般的な慣行

しかし、判例であるような、新築時の設備から再調達原価を算出し、
これを経過年数分減価して設備金額を決定するようなことは、
正直あまり行われていません。

一般的な慣行として、建物金額の例えば20%を設備にするなどの
考え方があります。

この割合は、エレベータやオートロックの有無などの設備の状況や、
築年数によって10%だったり30%だったりします。

このくらいであれば問題あるまい…という経験則によるものと言えます。

また、過去に30%としていて否認された事例がいくつかあるので、
30%以上にするのはリスキーかなと思われたりもします。
(H12.7.3裁決、H12.12.28裁決など)

このあたりは、個別の物件を見つつ決めていくしか無いでしょう。
一律に何%ならOKとは言い難い部分ですね。

極端な付属設備計上はデットクロスの大きな原因
保有物件の全体像を見つつ決定しましょう。

まれに、設備は節税になるから大きいほうが良いに決まっているとばかりに、
大きく設備を計上し、それを3年などの短期で減価償却している人もいます。

このような極端な償却はかなりきついデットクロスを発生させます。

長期保有で購入したのに、4年後にデットクロスが発生してしまったのでは、
正直目も当てられません。
売却しようにも、簿価を一気に切り下げてしまったので、多額の譲渡益が発生
してしまうこともあり、そうそう売りに出せるものでもありません。

また、償却用物件を追加取得することも考えられますが、一度償却用物件に
手を出した場合、償却の終わった物件を売り、償却の取れる物件を買うという
売買を繰り返すことになりがちです。

附属設備を大きくして節税するというのは、使い方次第で毒にも薬になります。

毒の部分が出てこないようにするためには、事前に詳細なシミュレーションが必須
でしょう。

結局の所、不動産投資はシミュレーションを的確に行い、各種諸条件を設定しさえ
すれば、そうそう困ることはありません。

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