賃料減額したら寄付金?オーナーの税金解説

最近、特に商業ビルでの賃料減額が話題になってきました。

テナントに顧客が全くいなかったりする状況ですし、営業自粛が養成されて、売上ゼロというケースもあり、賃料の減額交渉になっているようです。

テナントの大家さんや、レジ物件でも一部テナントの物件の大家さんなどは、実際に交渉が来ている方も多いでしょう。

それでは、この減額交渉に応じた場合に税金がどうなるのか、確認してみましょう。

特に、法人オーナーの場合は寄付金という厄介な問題が生じますので、注意が必要です。

まずは、法人オーナーの場合を確認しましょう。

法人での減額金額は基本的に寄付金に該当

本来の賃貸借契約書に記載されている賃料が、100だとしましょう。

この100の賃料を半年間50にしたとすると、どうなるのでしょうか?

従来は100円の賃料を受け取っていたので、以下のイメージです。

 

売上(賃料収入)100
経費0
利益100

 

では、賃料を半額にしたらどうなるでしょうか。

 

売上(賃料収入)50
経費0
利益50

 

受け取る賃料を50にしたのだから、売上(賃料収入)が50になって、利益は50になる。

というのが一般的なイメージかもしれませんが、実はそうではありません。

以下のようになるのが正解です。

 

売上(賃料収入)100
経費(寄付金)▲50
利益50

 

あれ、利益が50ってことは、内訳が変わっただけだから影響は無さそうですね?
賃料の回収50で、利益も50なのだから、税金計算上なんの影響もなかったということでしょうか?

と思われた方は実はそうではないのです。

というのも、寄付金が発生してしまっているからです。

法人で寄付金になったら何がまずい?

では、寄付金になったらなぜまずいのでしょうか?

ここで問題なのは、寄付金は基本的に経費にならないということなのです。

より具体的に言うと、以下の計算式で計算した金額までしか経費になりません。
(なお、国や公益社団法人などへの寄付は経費になることもあります)

〔資本金等の額 ×12分の当期の月数×1000分の2.5+所得の金額×100分の2.5〕×4分の1=〔損金算入限度額〕

例えば、資本金500万円、所得800万円の法人が、月30万円の賃料を10万円に半年間減額した場合を考えてみましょう。
(ちなみに、この所得は寄付金計上前の所得なので、満室賃料ベースと考えて下さい。)

法人は、満室賃料で6ヶ月180万円を受け取っていたのですが、そのうち120万円を減額し、実際の受取賃料は60万円になったケースです。

つまり、減額した120万円は寄付金ということです。

一方、120万円の寄付金が発生した一方、それを経費にできる金額は、実は53,125円にしかならないのです。

一般的には、賃料収入が半年で180万円から60万円に減ったわけですから、以下のように考える方がほとんどでしょう。

 

売上(賃料収入)60万円
経費(寄付金)0
利益60万円
納税(25%)15万円

 

しかし、申し上げたとおり、そうではなく、寄付金が入ってきます。

 

売上(賃料収入)180万円
経費(寄付金)▲120万円
利益60万円
納税

 

さらに、税金の計算上は、120万円の寄付金のうち53,125円しか経費になりません。

というわけで、税金計算上では以下のようになります。

 

売上(賃料収入)180万円
経費(寄付金)▲5万円
利益175万円
納税(25%)44万円

 

なな、なんですとー!!という感じですよね。

賃料として入ってきたのは60万円なのです。それなのに、税金計算上の利益は175万円です。

つまり、税金をかなり多く払わないといけないといけないということなのですね。

本来、賃料収入が60万円であれば、納税は15万円なのです。

しかし、賃料減額によって賃料収入が60万円になったなら、納税は44万円なのです。

下手をしたら納税でキャッシュフローが赤字になってしまいます。

賃料を減額しても、満額賃料を受け取ったくらいの納税をしなくてはならないのです。

なぜこのようなことになるのかというと、税法上、法人は利益追求集団であるという前提があるためです。

利益追求団体であるはずの法人が、賃貸借契約書で定められた賃料を減額するという行為は、自身の経済的利益を自発的に放棄するということなのですが、利益追求団体が利益を自発的に放棄するというのはありえない。というのが基本的な考え方です。

では、なぜそういったありえない行為をするか。基本的には租税回避行為といったグレーから黒の意図をもって行われると考えられますので、税務上経費にしないというペナルティが設定されていると考えられます。

法人のコロナウイルスによる賃料減額の特例

ところで、このような制度下では、オーナーが賃料を減額するメリットは一切ありません。

なぜなら、賃料を半額にしても、賃料満額前提で税金を納めるというバカバカしいことは誰もしないでしょう。

ただ、今回はコロナウイルスという影響もあるので、一定の条件下でこの寄付金になった部分を経費にすることが認められました。
つまり、賃料減額を行っても、満室賃料で税金を計算する必要はなく、受け取った減額後の賃料ベースで税金を計算できることになります。

一定の条件とは、以下の3つになります。

  1. 取引先等において、新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること
  2. 貴社が行う賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
  3. 賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること

このような、一定の条件をクリアできた場合には、減額した賃料は寄付金とならないのです。

よって、取引先がコロナウイルスの影響で収入が減少し、事業継続が困難になりそうなことを決算書や試算表で確認する必要があるでしょう。
また、賃料減額がテナントの復旧支援を目的とした期間限定のものであることが書面で確認できること。

などが要求されるのではないかと思います。

今回賃料減額をする場合は、必ず上記3条件を満たすようにしておきましょう。

そうでないと、満室賃料で税金を計算しなければならなくなります。

個人名義オーナーの場合は?

今までは賃料減額をするオーナーが法人であるというのが前提でしたが、では個人のオーナーの場合はどうなるのでしょうか?

個人の場合は、単純に賃料収入が減少して終わりです。

寄付金云々という面倒な話は発生しませんから、ご安心ください。

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