はじめに売買契約書ありき~土地建物の金額の決め方①

収益用不動産を取得した場合に、どのように土地と建物に按分するのか。

もちろん買主である不動産投資家にとっては、建物金額を大きくすることにメリットがあります。

建物金額を大きくするためにはどうしたらよいか、地味なように見えて、非常に重要な論点ですね。

あまり詳細に語られもしないテーマですが、今回は少し掘り下げて考えてみましょう。

シリーズ:土地建物割合を考えよう
第1回:不動産の土地建物の金額を考えていますか?
第2回:はじめに売買契約書ありき~土地建物の金額の決め方①
第3回:売買契約書が税務署に否認される?~土地建物の金額の決め方②
第4回:売買契約書に土地建物をまとめて記載した場合~土地建物の金額の決め方③
第5回:土地建物比率で不動産鑑定評価が認められた事例

はじめに売買契約書ありき

売買契約書に土地建物の金額が別記されている場合は、その金額になります。

この場合、後で土地建物の金額を別の金額に変更することは原則できません。

過去に売買契約書に記載した金額を無視し、不動産鑑定評価額によって按分して否認された事例がありますので、見てみましょう。

平成23年12月9日千葉地裁棄却、平成24年5月31日東京高裁控訴棄却、最高裁上告不受理により確定

「控訴人は、一括取得した土地建物の対価の区分について、土地及び建物の一括代金額を、不動産鑑定士による鑑定評価額で按分するのが、客観的合理性が担保された方法であり、全ての場合にこの方法によるべきであると主張する。しかしながら、売買契約の当事者が契約書において合意した売買価額を明示した場合には、それとは異なる金額が実際には合意された金額であったことが控訴人によって主張・立証されたなど特段の事情のない限り、そこに記載された金額をもって、購入の代価とするのが合理的である。」

続いて、同じく売買契約書を無視して固定資産税評価額で按分し、否認された事例。

H20.5.8国税不服審判所裁決

「土地及び建物を一括取得した場合の建物の取得価額については、売買契約書において土地建物の売買価額の総額とともに、内訳として土地、建物それぞれの価額が記載されている場合には、契約当事者が通謀して租税回避の意思や脱税目的等の下に、故意に実体と異なる内容を契約書に表示したなどの特段の事情が認められない限り、当該契約書における記載内容どおりの契約意思の下に契約が成立したものと認められるから、その価額に特段不合理な点が認められない限り、契約当事者双方の契約意思が表示された当該契約書記載の建物の価額によるのが相当である。」

判例を読んでも、取り付く島もありません。

売買契約書に記載された金額は、第三者間の合意により形成されますので、これを変更することは極めて困難なのです。

ぜひ実現したい建物割合がある場合は、売買契約書に書きこむことが最大の近道となります。

逆に、不本意であっても書かれた金額は後で変更できません。

売買契約書に記載する金額はどう決める?

売買契約書に土地と建物をどのような金額で記載するか。これはまさに売主と買主の交渉になります。
結構シビアな交渉になることが多いです。

売り主が業者(消費税課税事業者)である場合

通常、土地建物割合は売主(業者)が決定します。
ただ、売主が設定した金額は必ずチェックしましょう。
固定資産税評価額按分よりも建物が小さければ、売主有利に過ぎるため、交渉したほうが良いかもしれません。

しかし、業者相手の交渉は、業者側で消費税納税額が増えますので、事実上の物件価格の交渉となります。

固定資産税評価額按分までなら可能なことも多いですが、それ以上は難しいことが多いです。

特に、売り主が大手の場合、売却時の土地建物按分方法が内部統制などでルール化されていることもあり、交渉はほぼ不可能です。

対策としては、売主の消費税追加負担分を物件価格に上乗せして購入するというやり方があります。

減価償却によるCFの改善が物件価格に上乗せして支払う金額より大きければ、十分検討に値する手段です。

売り主が個人(消費税非課税事業者)である場合

大前提として、売り主が個人の場合、売買契約書には土地建物の金額を分けて記載せず、土地建物の合計額のみ記載されるのが通常の慣例です。

このため、土地建物の金額を分けて記載してもらうよう交渉する必要が出てくるのです。

個人が売主である場合、たいてい消費税非課税事業者です。建物割合が高くなっても消費税の納税がありませんので、建物割合を上げても、消費税の点では売主にとってさして痛痒のあることではありません。

結果、個人が売り主の場合は売買契約書に建物高めで記載する交渉が成功することがあります。

この時障害となるのは、私の経験上、売主の「なんだか良く分からないからイヤ」という感情、税理士の助言基づく拒否、あとは仲介業者の抵抗です。

  • 売り主の「なんだかよくわからないからイヤ」と言う感情

売り主が抱く、「税金とかよー分からん。とにかく変なことせんといて」という、よくある感情的反応です。

感情的反応なだけに、これを覆すことは容易ではありません。

  • 税理士の助言に基づく拒否

この場合の税理士は、売主側の税理士のことです。

正直税理士も不動産に暗い人が多いです。このため、売主から相談を受けた場合、売主に「とにかく変なことせんといて」という助言をする税理士も多いです。

こうなった場合、覆すことはほぼ不可能です。

  • 仲介業者の抵抗

なぜ何の関係もないはずの仲介業者が抵抗するのでしょうか?

3つ理由があるようです。

1つ目が、仲介手数料が減ってしまうということ。

例えば、2億円の物件で土地1億建物1億円(内消費税8百万円)で考えてみましょう。

通常の仲介手数料の計算は、
(2億円-8百万円)×3%+6万円=5,829,000円(税別)
ですね。

一方、売買契約書に土地建物の内訳の記載がない場合は、

2億円×3%+6万円=6,060,000円(税別)

になります。彼らの売上が若干減ってしまうのですね。

2つ目が、そもそもそのようなことをしたことがないという慣習です。

売主が個人である場合、土地建物金額を区分記載しないという慣習は仲介業者においても極めて強固です。
このため、なぜそのようなことを言ってくるのか?何を考えているのか?
という反応をされてしまうことも多いです。

3つ目が、自分も良く分からないことを売主に説明することが面倒だという点です。
まぁ、確かに面倒でしょうが、それも仲介の仕事のような気もします…

売買契約書は慎重に

売買契約書に記載した土地建物の金額は、後日変更することができません。

事前にしっかりと検討した上で、売買契約書を締結するようにしましょう。

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