キャピタルゲインとインカムゲインと元金返済

投資には、キャピタルゲインとインカムゲインがあります。

キャピタルゲインが「値上がり益」のことですね。
インカムゲインは「保有期間中の現金収入」です。

概ね投資で儲けるためには、キャピタルゲインかインカムゲイン
を狙うことになります。

しかし、不動産投資はもう一つの儲けがあるのです。
それは、借入金の元金返済です。

不動産投資の収益構造

不動産投資において、収入を得る方法は以下の3つです。

①毎月のキャッシュフロー
②売却時の値上がり益
③毎月の借入金の元金返済

①と②はみなさんイメージし易いと思います。
というか、今の不動産投資は概ね①のキャッシュフロー目当て
で始める方がほとんどですね。

もちろん、①と②も重要な収入なのですが、個人的に見過ごされやすい
③の元金返済が非常に重要であると考えています。

というよりもむしろ、この③こそが不動産投資を他の投資と隔てる
最も特色ある部分であると思います。

元金返済が収入ってどういうこと?

多くの方は、元金返済を単なるキャッシュアウトと感じています。
結果、不動産投資は銀行が儲けているだけだというボヤキも出てきます。

しかし、本当に元金返済は単なるキャッシュアウトなのでしょうか?

仮に、100の物件を100借入をして購入したとしましょう。
この場合、貸借対照表は以下のようになります。

この後、毎月元金の返済と利息の支払いを行っていくことになります。

今回、この100円の物件は、借入金の返済をするとキャッシュフローが
0円になってしまう物件であったとします。

普通であれば、投資に失敗したなと感じてしまうかもしれません。

しかしながら、毎月のキャッシュフローが出なかったとしても、元金返済
だけは行われています。
(元金返済ができなくなると逆に破産です)

その元金返済を繰り返していくと、貸借対照表は下のようになります。

仮に、毎月キャッシュフローが0だったとしても、バランスシートの純資産
は拡大していたのです。

純資産が拡大したから何なのだ?と思われる方もいるかもしれません。
たしかに、毎月のキャッシュフローが無いのであれば、純資産が拡大
したところで意味が無い。だって使えるお金が無いのだから。

実は、そうではありません。純資産は一種の貯金です。

この土地建物が、買った時と同じ100円で売却できたとすると、どうなるでしょうか?

100円で買ったのだから、キャピタルゲインは0円です。
毎月のキャッシュフローも0円だったので、インカムゲインもありません。

しかし、売却時には、手元に70円残ることになるのです。
よく考えると当然ですよね。

保有物件が100円で売れて、残債が30円残っていたのでその返済をすると、
70円残っていることになります。
この70円とは、取りも直さず毎月返済した元金にほかなりません。

つまり、売却したタイミングで、毎月返済していた元金が手元に戻ってきているのです。
これこそがまさに元金返済が収入であるという理由です。

元金返済はその時点では現金を失う事になりますが、しかしその現金は物件の売却時に
帰ってくるのです。
そういうわけで、実質的には元金返済とは積立定期預金と同じような効果を発揮する
のです。

物件価格の下落が元金返済より激しければ、
元金返済も単なるキャッシュアウトである

一方で、元金返済が完全にキャシュアウトでしか無い場合もあります。
それは、物件価格の下落スピードが、元金返済スピードを追い越してしまう
ようなケースです。

100円で買った物件を保有し、元金を返済し、さて売却となった時、
その物件が20円でしか売れなかったとしたらどうなるでしょうか?

バランスシートは以下の様になっていたということです。

こうなると、売却で20円を得ても、残債の返済で30円支払いが必要ですので、
10円の持ち出しが発生してしまいます。

こうなると、毎月返済していた元金は、全く回収できません。
結果として元金返済は完全なキャッシュアウトでしかなかったのです。

このような結果の差をもたらすものは、つまり物件の売却価格です。

物件の売却価格が下落しない、若しくは若干下落する程度なら、元金返済
は貯金と同じです。

しかし、物件価格が著しく下落してしまうなら、元金返済は失われてしまう
のです。

 

このように、物件価格が激しく下がってしまうような物件は、
不動産の収入の一つである元金返済を失うことになります。
さらに、通常はキャピタルゲインも困難です。

結果として、そのような物件を保有するということは、投資の成果を
インカムゲインによってのみ確保するということです。
はたしてインカムゲインだけで投資の回収ができるのか、慎重な検討が
必要になるでしょう。

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