銀行評価のキモである債務償還年数を知ろう

債務償還年数

という言葉をご存じでしょうか。

日常生活では全く聞かない言葉ですが、不動産投資を行う上では非常に重要ですので、知識としては理解しておきましょう。

銀行が行う財務状態の評価

不動産投資は、融資がつきものです。

数千万円から1億円を超えるような規模の物件を取得する場合、現金で購入することは難しいでしょうし、たとえ現金購入が可能であったとしても、資金効率の観点から融資を受けて物件を購入するかたがほとんどでしょう。

最近はやりの戸建て投資になると、物件価格も数百万円規模ですから、現金購入が可能なことも多いようですが、やはり融資の獲得を目指す方が多いようです。

つまり、不動産投資を行うに当たっては、物件規模の大小にかかわらず、融資を使う方が多いということですね。

この、不動産投資に融資がなかば不可欠であるということは、裏を返すと融資をしてくれる銀行目線で思考することが重要になってくるということですね。

要するに、自分が銀行から融資を受けられる状態を維持し続ける必要があるということです。

銀行は様々な指標を用いて法人や個人を評価します。

この評価方法は銀行によっても違うので、すべての評価基準を押さえるのは現実的ではありません。

ただ、「債務償還年数」という考え方は、どの銀行でも重要視している評価方法なので、最低でもこれだけは押さえておきましょう。

債務償還年数の計算方法

では、さっそくこの債務償還年数の計算方法を見てみましょう。

債務償還年数は、以下のように計算します。

債務額÷(経常利益×70%+減価償却費)

これによって、10とか20とかの数字が計算されますので、債務償還年数10年や20年というような表現になります。

実際は、債務償還年数の計算式は銀行によっても多少ことなりますが、だいたい最大公約数的にはこのような計算式で押さえておけば問題無いでしょう。

結局のところ、この債務償還年数は何を表しているのでしょうが。

計算式を見ると、「債務額」を、「経常利益×70%+減価償却費」の計算結果で割っているわけですね。

「債務額」は簡単ですね。

その会社や個人が今現在で保有している債務残高です。

この債務残高からは、法人や個人で保有する金融資産を控除することもあります。

では、「経常利益×70%+減価償却費」とは何なのでしょうか?

まず、経常利益×70%ですが、これはおおむね税引き後の利益を概算しているというイメージですね。

法人税率を30%と仮定し、経常利益から法人税を控除して税引き後利益を計算しています。

損益計算書の税引き後当期純利益をそのまま使う銀行もあますが、多くの銀行は経常利益から税後利益を概算している印象があります。

経常利益が、通常は会社の稼ぐ力を表していると考えられているからですね。

この概算税引き後利益に、減価償却費を足し戻すわけですね。

減価償却費は経費ですから、経常利益の計算上すでにマイナスされています。

一方で、減価償却費は経費ではありますが、通常の経費のようにキャッシュアウトがありません。現金が流出しない経費なのですね。

これを足し戻すということは、つまり、「経常利益×70%+減価償却費」は税引き後のキャッシュフロー、より正確に言うと、元金返済前の税引き後キャッシュフローを概算しているということですね。

そうなると、

債務額÷(経常利益×70%+減価償却費)

によって何が計算されるかというと、

1年間のキャッシュフローを全額債務返済に充てたとすると、何年で既存債務を返済し終わるか。

という指標なわけですね。

これがなぜ重要なのかというと、要するに借りすぎの判断に使われるということです。

もちろん、その会社が生み出すキャッシュフローが借入金の返済原資であるわけですから、その返済原資に対してあまりに過多な借入金を貸し出すと、返済できなくなるのではないか?という疑念を銀行は抱くわけですね。

ですから、債務償還年数は短い方が評価が高くなることは自然な流れです。

つまり、債務償還年数が30年の会社よりも20年の会社、20年の会社より10年の会社の方が銀行としてはお金を貸しやすいのです。

どの程度の債務償還年数が理想的かは、正直銀行によって異なります。

メガバンクなどの目線の高い銀行になると10年が目途と言ったりしますし、信用金庫であれば30年近くても大丈夫だったりします。

不動産賃貸業では、20年を切ってくるくらいであれば、多くの銀行で門前払いはされないのかなと思います。

債務償還年数をよくするためには?

要するに、融資を継続して受けるためには、この債務償還年数を極力短い状態を維持することが理想です。

では、この債務償還年数を短くするためにはどうしたらよいのでしょうか。

もう一度計算式を見てみましょう。

債務額÷(経常利益×70%+減価償却費)

債務額を、右側の計算式の結果で割っているだけですから、この結果を小さくしようとすると、

・債務額を小さくする
・(経常利益×70%+減価償却費)を大きくする

の二つしか道はありません。

債務額を小さくするということは、つまり繰上返済をするとか、頭金を入れるという話ですから、すぐに取り組めるものではありませんね。

では、(経常利益×70%+減価償却費)を大きくするためにはどうしたらよいのでしょうか。

これは、経常利益を大きくするか、減価償却費を大きくする必要があるでしょう。

ただ、減価償却費は好きに大きくしたり小さくしたりすることはできません。

物件を取得した際に、建物金額・償却方法・償却期間が決まれば、それに応じて機械的に計算されるものです。

ですから、(経常利益×70%+減価償却費)を大きくするためには、経常利益を大きくするしかありません。

とういうことは、つまり、節税をして利益を削りすぎると債務償還年数が長くなってしまうので、結果として次の融資の道を自ら閉ざしてしまうかもしれません。

事業者として不動産投資をするために

不動産投資家の方と話していると、

節税により利益を圧縮して、税金を払わなくて済むようにしたい。

という要望をお持ちのケースをしばしば見ます。

たしかに、自分が個人でやっている会社なのだから、自分の好きにコントロールして何が悪いのか、という点はごもっともです。

不動産投資を行っていく上では、融資を受ける必要があるので、銀行との付き合いが必須になってきます。

そういう意味で、不動産投資を行うということは、特に1つ買って終わりではなく、物件の取得を継続的に行っていくとなると、銀行から自分がどう見られているのか、という点を必ず意識しなければならなくなります。

ですので、自分の会社だからと言って自分の好き放題できるというわけではなく、銀行目線を意識しながら、継続的に事業活動を行えるようにしていかなければなりません。

債務償還年数は銀行目線のなかでもとりわけ重要なものですから、是非意識していきたいですね。

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